ソノス製品で初めて搭載されたバッテリーとBluetooth接続への対応によって、屋外にも持ち出せるスピーカー「Sonos Move」。周囲の状況に合わせた音質の自動チューニングやある程度の防水性など多数のメリットがある一方で、気になる点もいくつかあった──。『WIRED』US版によるレヴュー。
TEXT BY JEFFREY VAN CAMP
TRANSLATION BY MIHO AMANO/GALILEO
ソノスは、『WIRED』US版のガジェットチームがとても気に入っているスピーカーメーカーである。さまざまなWi-Fi接続規格が“使い捨て”されるいまの世界において、適切に接続されるものも、長もちするものもないように思える。こうしたなか、ソノスのスピーカーは常に卓越した音質を実現し、何年も使えるようにつくられている。ほかのスピーカーにはできないことをなしとげているのだ。
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ソノスのスピーカーは、好きなようにグループ化することができ、ほぼすべてのストリーミング音楽アプリと連携する。それに、Google アシスタントかAlexaのいずれかの音声アシスタントでも制御できる。この2019年ではまれなことだ。
ソノスはこれまで、自社のスマートWi-Fiスピーカーの全製品ラインナップを室内向けにつくってきた。まるで誘導ミサイルのように標的から外れることがなかったし、裏庭に出ることさえ考えていなかった。ほぼ10年の間、市場に存在する多くの素晴らしいBluetoothスピーカーを完全に無視してきたのだ。
ところが約1年前になって、ソノスの最高製品責任者であるニック・ミリントンは、同社が屋外へと踏み出す準備を進めていることを初めてほのめかした。「社内で話し合っている重要な変化のひとつが、家から出てあらゆる場所へと移動することです。音楽は家だけで聴くものではありません。さまざまな場所で聴くものなのです」
初めて可能になった屋外使用
そして1年が経ったいま、ついにBluetooth接続に対応したソノスのスピーカーが登場した(1年は長く感じるが、ソノスはテック業界のほとんどの企業と比べて新製品を発表するペースがゆっくりなのだ)。新製品「Sonos Move」は、ソノスで初めてバッテリーを内蔵したスピーカーであり、Wi-Fiの範囲外でも動作する唯一のスピーカーである。
完全に屋外向けというわけではない。ほとんどの時間は棚に鎮座しているが、どこにでも持ち運べるというわけだ。普段は充電クレードルの上に置かれていて、ほかのソノス製品と同じようにWi-Fiとソノスのアプリにつながっている。すでにソノスのスピーカーで構築したネットワークがあるなら、それと同期することもできるが、「圏外」で音楽を楽しみたいなら、背面の取っ手を握って持ち出し、Bluetoothに切り替えればスマートフォンやパソコンにつなぐこともできる。
IP56の防水・防塵性能を備えているので、雨のなかや海岸に持ち出しても大丈夫だ。とはいえ、泳ぎに連れていってはならない。水没したら動かなくなってしまう。
あとで説明するが、ちょっとした欠点はあるし、399ドル(日本では税別46,800円で3月8日発売)という価格にうめき声を上げる人もいるだろう。しかし、ソノスがこれほど柔軟で最高品質を誇るポータブルスピーカーを手の届く価格で出したことはないという事実は、認めないわけにはいかない。
パーティ向けのスピーカー?
Moveについてまず思ったことは、「大きい」ということだ。重量は、12オンス(約350ml)の缶ビール6本パックと同じくらい。高さ9.5インチ(約24cm)、幅6インチ(約15cm)なので、物体としての存在感もある。小型スピーカーの「Sonos One」ほどは、容易に部屋の背景に溶け込むことはなさそうだ。
幅はSonos Oneを横にして2つ積み上げたくらい、あるいはUltimate Earsの「MEGABOOM」を2つ並べたくらいだと言える。24オンス(約710ml)の缶ビール2本を粘着テープでつなげたくらいでもある(もちろん、粘着テープでつなげた缶より、かなりいい音がする。ひどいどんちゃん騒ぎでもない限りは)。
何度もビールを引き合いに出しているのは、これがパーティ向けにつくられたスピーカーだからだ。スタイルとタッチボタン(音量、再生/一時停止、ミュート)はSonos Oneと同じ。上部にはマイクの穴がリング状に配置されており、2つの音声アシスタントのうち、好きなほうに話しかけることができる。
筐体は、ほぼ黒のプラスティックでできている。ベース部分はつや消しで、柔らかいゴムのようなつくりになっており、スピーカーグリルは金属製だ。頑丈そうに見えるので、1回や2回落としても大丈夫そうだが、心の優しさゆえ、その耐久性を徹底的にテストすることはできなかった。
優れた機能性
バッテリーは、シリコン製のベース部分に組み込まれている。使ってみたところ、宣伝されているような「1回の充電で10時間」よりも少し長くバッテリーがもった。持続時間は、どれだけ大きな音量にするかによって異なる(内蔵のリチウムイオンバッテリーは取り外すこともできる。ソノスいわく、現在のバッテリーが劣化し始めた数年後、新しいバッテリーが欲しくなるころに交換用バッテリーを用意するという)。
底部には2つの金属コネクターがあり、付属の充電クレードルに簡単にセットできる。このクレードルはちょっとしたスタンドのような機能を果たすので、家でのMoveの定位置にするのがエレガントだろう。とはいえ、背面にあるUSB-Cタイプのポートから充電することもできる。
大きな違いは、背面につくられたくぼみにある。これを取っ手のようにつかめば、簡単に持ち運ぶことが可能だ。この形状を見ていると、室内のロッククライミングで使われる、よく手になじむグリップを思い出す(ジムの壁に取り付けられている、あの突起のことだ)。片手だけでひょいと持ち上げることができ、6ポンド(約2.7kg)の重さがあるにもかかわらず、移動が苦になることはない。
音のカメレオン
これがポータブルスピーカーであるなら、MEGABOOMやほかの多数のポータブルスピーカーのように、弧を描くように全方向に音を出すものだと期待していた。しかし実際は、もう少し従来型のものに近かった。
より高くてくっきりした音については、下向きに音を出す1個のツイーター(高音域用スピーカー)が左右に音を割り振り、音空間を広げる。中央には正面を向いた巨大なミッドウーハー(低音域用スピーカー)があるので、ビートが弱いときにも補強できる。
この1週間ほどMoveでたくさんの音楽を聴いてみたからこそ送ることができる最大の賛辞は、「ずっと電源を切らないでいたい」と感じられることだ。
ツイーターとウーハーは、素晴らしく音を広げてくれる。スペースにもよるが、おそらく180度まで広がっているだろう。Moveの音は、オフィスや居間、裏庭まで余裕で満たし、同サイズの多くのスピーカーと比べて、音の深みも鮮やかさも格段に上回っていた。
アップルの「HomePod」やグーグルの「Google Home Max」と同様に、ファーフィールド音声認識対応のマイクを搭載しており、場所に応じて常に自動調整している。このため、どこでもいい音を出すことができる(Google アシスタントやAlexaに話しかけることができるのも、このマイクのおかげだ)。
場所に応じた自動調整
ソノスはこれを「Trueplay自動チューニング」と呼んでいる。Moveをある場所に置くと、およそ30秒後にはその周囲の環境に合わせて音を自動で適応させる。わずかな変化だが、聴いていれば違いは明らかだ。
Moveを屋外に置いたときには、音が大きく力強くなった。これに対して屋内、例えば棚に置いたときには、低音が落ち着いて棚の木材の振動が止まり、高音は大きくなりヴォーカルがよく聴こえるようになった。
その音の素晴らしさは、どこに置いても変わらないようだ。この週末、1時間半ほどクルマに乗った際に、助手席側の足元にMoveを置いて、カーステレオ代わりに使用してみた。あまり期待はしていなかったものの、しばらくするとクルマのスピーカーを使っていないことを忘れていたのだ。
ザ・カーズのリードヴォーカルだったリック・オケイセックの悲劇的な死を悼みながら、「Just What I Needed(燃える欲望)」や「You Might Think(ユー・マイト・シンク)」といったヒット曲で、彼らのクリーンで緻密なポップロックを聴き直していた。目を閉じると、カーズと一緒にスタジオにいるかのように感じられた。
Moveは、これまで使ってみたほとんどのソノスのスピーカーと同様に、再生する音楽を過度に増強したりしない。必要なときに低音のパンチを効かせ、ヴォーカルはスタジオのように生き生きとしている。音楽の要求に合わせてバランスをとるのだ。
Bluetoothの欠点
Moveはたいていの場所に持っていくことができる。だが今回は、その制約にたびたび悩まされた。Bluetooth接続はしっかりと機能するが、ソノスのアプリを使って曲を再生したり、スピーカーの設定(イコライザー)を調整するには家のWi-Fiが必要になったのだ。SpotifyやApple Musicで直接音楽を再生するのなら、問題はない。
またMoveは、同時に複数のスマートフォンやデヴァイスにつなぐことができない。つまり、パーティーのDJはひとりだけになるということだ。それに、ソノスで有名な複数のスピーカーをグループ化できる機能は、Bluetoothでは使えない。先ほどから何度も話に出ているMEGABOOMのような多くの競合スピーカーでは、直列式に連結できる。
ソノスがいまのところBluetoothを中核となる機能ではなく、あくまで“おまけ”と見ていることは明らかだろう。頻繁に実施されているアプリのアップデートによって、将来的にはBluetooth機能が追加されるかもしれない。だが、ソノスにとっての中心は、まだWi-Fiにある。
もし水遊びをする休暇にMoveを連れていこうと思っているなら、いますぐその考えは捨てたほうがいい。濡れておかしくなる可能性があるからだ。
なぜ知っているかというと、ホースで何度もMoveに水を噴射してみたからだ。上部に水をかけるたびにタッチボタンがおかしくなったようで、一時停止や再生、音量の変更が繰り返された。“耐水”のスマートフォンを水中で使用したかのようだった(決してまねしないように)。
このタッチコントロールはオフにすることもできる。しかし、それはあくまでWi-Fiに接続しているときのみなので、先のことを考えて行動したほうがいい。つまり、濡れても大丈夫だが、濡れた状態で動作するようにはつくられていないということだ。
不平不満を吐露しているいまのうちに、AlexaスキルとGoogle アシスタントには、ソノスと連携しない機能があることにも触れておくべきだろう。普段眠りにつくときにGoogle アシスタントを使ってホワイトノイズを流しているのだが、この特別な機能がソノスのスピーカーでは機能しない。代わりにSpotifyのホワイトノイズが再生されるのだが、これがなかなか眠りにつきにくいのだ。
新しいソノスの始まり
ソノスがイケアとコラボレーションしてつくったスピーカー「Symfonisk」と同じように、Moveはソノスにとって「新種」の製品である。17年の歴史を誇るスピーカーブランドにとって、これがより広い新たな世界の始まりになることを期待している。
関連記事:製品レヴュー:イケアとソノスのコラボスピーカー「Symfonisk」は、低価格でも“ソノスの音”を楽しめる
世界観を広げるには、それなりにコストが必要になる。399ドルのMoveは、価格で言えばSonos Oneの2倍だ。パワーと柔軟性はOneよりはるかに優れているものの、パワーだけを見れば「Sonos Play:5」には及ばない。それに、ほとんどのハイエンドのBluetoothスピーカーよりも高価で、室内用スピーカーとしてほぼ同等機種であるアップルの「HomePod」より100ドル高い。
価格を気にしなくていいのであれば、(就寝時以外は)どんなときでもMoveを選ぶだろう。屋内でも動作し、いざとなったら10時間の小旅行にも対応できる考え抜かれたスピーカーなのだ。つまり、比較的単調なライフスタイルにはぴったりだと言える。
しかし、完全防水ではない(あるいは水に浮かぶ機能はない)ので、カヌーでの川下りには適さないし、フロートに乗せてプールに浮かべるのもやめたほうがいい。
Sonos Moveに399ドルの価値があるかどうかは、行動時間と範囲によって決まる。穏やかな生活を送れば送るほど、Moveも人も幸せになれるだろう。
◎「WIRED」な点
力強いベース音と特徴的な音が、置かれた場所に応じて自動調整され、優れた音質を実現する。IP56の防水・防塵性能を備え、ソノスの既存のセットアップとの連携も可能。Google アシスタントまたはAlexaに対応するマイクを内蔵。耐落下性あり。Bluetooth対応で、持ち運びやすい取っ手と、簡単に充電できるクレードル付き。
△「TIRED」な点
Bluetoothモードではソノスのアプリを使えない。Bluetoothの拡張機能なし(Bluetooth経由で接続できるデヴァイスは一度にひとつだけ)。水没には対応しない。濡れるとタッチコントロールがおかしくなる。価格が高い。
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