夏本番に備えて、身に付けて体を冷やす製品が相次いで登場している。消防庁の統計によると2019年5―9月には熱中症で約7万人以上が救急搬送されており、暑さ対策は命に関わる重要な問題。新型コロナウイルス感染症対策で需要が急増したフェースシールドも、着用時の暑さや不快感を取り除く工夫が欠かせない。
電機各社の持つ知見や技術が新たな暑さ対策製品を生み出している。ソニーは接触する体表面を冷やしたり温めたりできるウエアラブル端末「レオンポケット」を発売した。一般販売に先駆けて実施した19年のクラウドファンディングで“着るエアコン”として注目を集めた製品だ。
直流電流を流すと冷却や加熱、温度制御ができる半導体素子「ペルチェ素子」を活用して開発した端末を、首の後ろ側にポケットがある専用肌着に入れて使用する。スマートフォンのアプリケーション(応用ソフト)から温度調節ができ、本体の温度や着用者の行動に応じて温度を自動調整する機能も備える。
インターネット通販で人気を集めているのが、サンコー(東京都千代田区、山光博康社長)が4月に発売したウエアラブル型クーラー「ネッククーラーNEO」だ。価格は5980円(消費税込み)。受注台数は20万台を突破した。各通販サイトで8月下旬入荷分の予約申し込みが始まると、すぐに売り切れる状況が続く。
本体を首にセットして電源を入れると、プレート部分が約2秒で冷える仕組み。冷えたプレートが首に当たることで涼しくなる。重さは約150グラムで、電気を流すと冷却するペルチェ冷却方式を採用。強弱2段階の切り替えが可能で、プレートの温度が強モードで外気温に比べて15度C、弱モードで10度C低くできる。
強と弱を自動で繰り返すことで感覚がまひすることなく、缶飲料を当てたような“ひんやり感”を維持できる。容量1万ミリアンぺア時のモバイルバッテリーを接続した場合、強モードで約10時間、弱モードで約20時間利用できる。
デサントが発売した「コアクーラー」もクラウドファンディングで好評を博した製品。開発にはシャープが参加している。コアクーラーはグローブと独自の蓄冷材で構成。手のひらにある動静脈吻合(AVA)と呼ばれる血管を冷やして血液の温度を下げることで、体の深部体温を効果的に下げる。適度な冷たさを保てる蓄冷材は、シャープが液晶材料研究で培った技術を活用している。
富士通ゼネラルは、ペルチェ素子を活用した首かけ型のウエアラブルエアコン「コモドギア」を開発した。頸(けい)動脈を通る血液を冷やすことで深部体温の上昇を抑える仕組み。端末は腰に付けるラジエーターとホースでつながっており、冷却水を循環させて放熱する。21年度に発売予定で、生体情報のセンシング機能やシステム連携なども開発中。製造現場や警備などさまざまな場所で健康状態の把握に役立つIoT(モノのインターネット)端末を目指している。
製造現場でも利用が増えているフェースシールドも試行錯誤が始まっている。富士電機はフレーム部分に換気口を持つ独自のフェースシールドを試作した。キヤノンはファン付きバイザーを開発して製造現場などでの利用を始めた。頭部に装着する本体部分にファンを搭載しており、額から顔の前面にかけて下向きの気流を発生させることで、マスクやフェースシールド装着時の暑さを軽減する。
家電量販大手のビックカメラによると、暑さ対策製品の足元のトレンドは例年と同じくエアコンや扇風機、サーキュレーターが主力を担っている。一方で、ハンディファンや首かけ式の扇風機といった携帯可能な扇風機も19年に続き人気だという。
携帯できる小型の扇風機はこの数年で一気に認知度が高まった。「多くの注目を集めたガジェット(目新しい機器)は、次の年にはバリエーションが広がり人気が続く。ハンディファンや首かけ式も20年は早い段階から品ぞろえが豊富になっている」(ビックカメラ広報担当)。
気象庁の季節予報によると、7―9月の平均気温は全国的に平年よりも高くなる見通し。梅雨明け以降は、猛暑対策グッズの人気争いも一層熱さを増しそうだ。
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July 26, 2020 at 08:22AM
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