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中東の庶民を救う固形燃料「ピート」はイスラエル占領下の ... - 東京新聞

屋外で乾燥中の固形燃料ピート=シェイクさん提供

屋外で乾燥中の固形燃料ピート=シェイクさん提供

 ロシアのウクライナ侵攻で世界的にエネルギー危機が広がる中、中東でオリーブの残滓ざんしから作った固形燃料が注目を集めている。アラビア語で「贈り物」を意味する「ピート」と呼ばれる。イスラエル占領下で燃料不足に苦しむパレスチナ人が考え出した。今冬、安価な燃料として各国に広がり、雪の積もるレバノン北部では、石油やまきが買えない低所得者層やシリア難民の家庭を暖めている。(レバノン北部コーラで、蜘手美鶴)

◆オリーブの実のかすを乾燥

レバノン北部コーラで2022年12月、固形燃料ピートの説明をするシェイクさん=蜘手美鶴撮影

レバノン北部コーラで2022年12月、固形燃料ピートの説明をするシェイクさん=蜘手美鶴撮影

 居間のストーブの中で、レンガ大の固形燃料が赤々と燃えている。「もう少しすると、暑くて上着を着ていられなくなるよ」。ピートを製造する北部コーラのオリーブ農家エリー・シェイクさん(44)が笑顔を見せた。暖かさは折り紙付きで、まきと比べても遜色ない。調理用オーブンの燃料に使う人も多いという。

 ピート製造は主にオリーブ農家が手がけ、オリーブの実から油を搾取後、残滓を乾燥させて直径約15センチ、長さ約30センチの円柱状に成形する。価格は1トン約270ドル(約3万5000円)で、まきの半分程度。冬場の1世帯あたりの燃料費は、灯油を使うと3000ドル(約39万円)を超えるが、ピートなら3分の1以下に抑えられるという。

 シェイクさんは2017年から本格的に販売を始め、昨年は約200トンを製造した。ウクライナ危機で燃料価格が高騰する中、今冬の売れ行きは好調で、アフリカ北部アルジェリアから大型注文も舞い込んだ。「この冬は初めてピートを使う人も増えた。皮肉だが、ウクライナ危機に商売が助けられている」と明かす。

◆テント暮らしのシリア難民も

2022年12月末、レバノン東部アルサルのシリア難民キャンプ。簡素なテントからはストーブの煙突が出ている=アルゼインさん提供

2022年12月末、レバノン東部アルサルのシリア難民キャンプ。簡素なテントからはストーブの煙突が出ている=アルゼインさん提供

 灯油やまきより安価なピートは、低所得者の暮らしを支えている。19年秋から深刻な経済危機に直面するレバノンでは、ウクライナ危機でインフレが加速し、市民生活が著しく悪化。燃料が買えない住民が森林を違法伐採し、警察に摘発される事件も起きている。

 東部アルサルのシリア難民キャンプでも、今冬はピートの利用者が増えている。アルサル周辺は冬場は積雪して氷点下になる上、難民の暮らすテントはビニールシートで覆われただけの簡易な作りが大半だ。シリア難民のナジ・アルゼインさん(48)は「ストーブを使わないと凍えてしまう。ピートは安いからほぼ収入のない難民でも手に入れやすい」と話す。

◆「生き延びるため、考えた」

 ピートはもともとイスラエル占領下のパレスチナ自治区で考案され、その後レバノンやシリアやヨルダン、トルコなどに広がった。

地図

地図

 「イスラエルの包囲から生き延びるため、考え出した燃料がピートだった」。パレスチナ自治区ガザのオリーブ農家アイマン・アルマスダルさん(58)が振り返る。イスラム主義組織ハマスが拠点とするガザは、07年以降、イスラエルが海と陸から周囲を完全に包囲。衝突のたびに電気やガスが遮断され、不安定な状況を打開しようと、住民らは試行錯誤の末にオリーブから新燃料を作り出した。

 ウクライナ危機を受けてピートが注目を集める中、ガザのオリーブ農家で働くアブドル・ラフマンさん(30)は「われわれのピートが他国の人を助けているのがうれしい。ピートで暖を取りながら、イスラエル包囲下にある私たちのことも思い出してほしい」と話した。

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