ダイヤテック株式会社のFILCOブランドでは、じつに多種多様なメカニカルキーボードを展開している。今回そんなFILCOブランドのキーボードの1つとして、非常にコンパクトでBluetoothでの複数ペアリングにも対応したメカニカルキーボード「Majestouch-MINILA-R-Convertible」が登場した。ダイヤテックオンラインショップでの直販価格は17,380円だ。
本日(8月5日)から予約販売を開始し、26日発売となる本製品は、HHKB(Happy Hacking Keyboard) Professionalシリーズのメカニカルスイッチ版とも言える存在で、ファンクションキーや物理カーソルキーの排除、Bluetoothによる4台のデバイスとのペアリング対応などの共通点が見受けられる。超コンパクトなメカニカルキーボードが好きなユーザーには朗報だろう。
今回筆者は「Majestouch-MINILA-R-Convertible」の日本語配列の茶軸版と、英語配列の青軸版を発売前に試用する機会を得たので、その使い勝手についてお伝えしたい。
日本語と英語配列で4つの軸を展開
Majestouch-MINILA-R-Convertible(以下、MINILA-R)は前述したとおり、日本語と英語配列の2種類を用意しているが、そこからさらにキースイッチとしてCheryy MXの「茶軸」、「青軸」、「赤軸」、「静音赤軸(Webサイトの表記ではMX SILENT静音軸)」を選ぶことができる。さらに、Web直販サイトのダイヤテックオンラインショップには英語配列の「黒軸」もある。
軸についてはダイヤテックのWebサイトのこちらのページに説明があるとおり、茶軸はスタンダードでタクタイルな入力感、青軸はクリック感が強く「カチッ!」という音がよく聞こえるメカニカルキーボードならでは打ち心地、赤軸はクリック感がなく、じょじょにスイッチが重くなるリニアなストロークで静音向き、静音赤軸は赤軸よりもさらに静音性を上げた作り。なお、直販で手に入る黒軸は赤軸と同じリニアタイプでバネの反発を上げたことで、キーの戻りが速くなっているという。
黒軸については執筆時点では製品が掲載されていないため不明だが、キーピッチはすべて19mmで、キーストロークは茶軸/青軸/赤軸が4mm、静音赤軸が3.7mmとなっている。なお、押下圧については情報が出ていないのでわからない。
今回筆者が試用した茶軸版は「スコスコ」と軽く打ててクリック感がなくタッチが軽い。赤軸の説明のほうにこそクリック感がないと書いてあるのだが、手元に赤軸のキーボードがないので、どの程度違いがあるのか確かめられなかった。キー構造が違うので一概には比較できないが、茶軸は筆者手持ちで静電容量式のHHKB Professional HYBRID Type-S(キーストローク3.8mm、押下圧45g)と比べてみると、キーによってはより軽く感じられた。
一方の青軸についてはこれぞメカニカルという感じで「カチャカチャ」と音が鳴りまくる。押し心地は違うが、押下圧は茶軸とほとんど変わらないようだ。
個人的にメカニカルキーボードはこのスイッチ音が好きだし、打っていて気持ちが良いので、「カチャカチャ ッターン」とリズミカルにキーを叩きたいなら青軸をおすすめしたい。ただ、ボイスチャットや動画配信時などでかなり音を拾うだろうし、オンライン会議をしているときだと内職しているのがバレやすそうなので注意が必要だ。
MINILA-Rの本体サイズは297×124×40mm(幅×奥行き×高さ)、重量は680g。横幅は30cmを切っており非常にコンパクト。単3形乾電池2本で動作するが、駆動時間は公式Webサイトに書かれておらず不明。ただ、Bluetooth 5.1規格を採用したことで、低消費電力に通信可能としている。
カーソルキーはFnキーと組み合わせて使う
前述したとおり、MINILA-Rは比較的標準に近いレイアウトを採用しているが、Spaceなどがある最下段についてはそのかぎりではない。とくにSpace両隣のFnキーは目を引く存在だ。
しかし、このFnキーはともに親指で押せるので非常に扱いやすい。比較例としてまたHHKB Professionalを出すが、HHKBの日本語配列は左側と右側の最下段にFnキーが1つずつ、英語配列については右側の最下段に1つしかない。ともに小指で無理なく押せる位置にあり、押すのが難しいわけではないが、親指で押せたほうが楽だろう。
とくに英語配列のHHKBについてはFnキーが右側にしかないため(DIPスイッチで左側にも配置することは可能)、F7~F12キーといった後半のファンクションキーはどうしてもタッチタイピングできず、目視が必要になる。しかし、MINILA-Rであれば、左手と右手側の両方にFnキーがあるため、まったく問題にならない。
また、本製品は日本語/英語配列ともに物理的なカーソルキーがなく、Fnキーを組み合わせてカーソルキーを操作する。DIPスイッチを使った入れ替えもできるが、DIPスイッチで入れ替え可能なキーについては後述する。
日本語キーボードであれば、/、Alt、カタカナひらがな、Deleteキーが、順に↑、↓、←、→となる。
【表】カーソルキーを使うための組み合わせキー | |
---|---|
日本語配列 | |
↑ | Fn+/キー |
↓ | Fn+Altキー |
← | Fn+カタカナひらがなキー |
→ | Fn+Deleteキー |
英語配列 | |
↑ | Fn+/キー |
↓ | Fn+Windowsキー |
← | Fn+Altキー |
→ | Fn+Deleteキー |
カーソルキーを使う場合、普通はSpaceキーの左側にあるFnキーを押しながら操作することになる。そのさいおそらく、Altキー(↓キー)に中指を置くようにして、そこを支点に左右と上のカーソルを操作するやり方が一番使いやすい。↓、←、→のキーはそれぞれキーピッチが同じであり、シリンドリカル形状のへこみが人差し指、中指、薬指にピタリと馴染む。
ただ、右端にあるCtrlキーもシリンドリカル形状になっているため、慣れないうちは間違えて薬指をCtrlキーに置いてしまうことがあった。筆者はカーソルを操作するさいに、まず人差し指(←)、次に中指(↓)、薬指(→)の3本の指をキーに合わせるように意識することで慣れていった。
指の移動量を減らすために指の位置を1つずらし、薬指をAltキー(↓キー)、に置くこともできなくはない。筆者はこちらでのやり方も試したが、この場合、余った人差し指で右側のFnキーを押すことできる。
これならホームポジションから素直に指を下ろすだけで済むし、かまぼこ形に膨らんだFnキーのすぐ右隣には←(Alt)キーがあり、右手を使うだけでまかなえる。こちらのほうが直感的と言えそうだし、左Shiftキーを組み合わせる場合もこのほうが指が迷いにくかった。
ただ、人差し指でFnキーを押しながら、薬指や小指を使うのは多少慣れが必要だし、間違って↑の左隣にあるPageUpを押してしまったりすることがあったので、しっくりこない場合は左側のFnキーを親指で押さえたほうが良いだろう。
左側にもカーソルキーがある変態仕様!
さて、MINILA-Rのカーソル操作について特筆すべきことがもう1つある。なんと左手側にもカーソルキーが用意されているのだ。
E(↑)、S(←)、D(↓)、F(→)をFnキーと組み合わせれば、左手でカーソルを操作できる。この場合はもちろん、右手側のFnキーを用いるのがセオリーだろうが、左手に関してはFnキーを左親指に置いたままでも操作しやすい。
しかし、人によっては「なぜW/A/S/Dキーではなく、E/S/D/Fキーにしたのか」と思ったことだろう。FPSといったPCゲームを遊ぶ人からすると、W/A/S/Dキーによるキャラクターの操作は定番だからだ。もちろん、ガチゲーマーの方などが薬指でAキーを押すのは知っているが、ゲーミングキーボードではないのだし、ここはDIPスイッチでW/A/S/Dキーに変えられるようにしてほしかったところ。
わざわざ左手でカーソルを操作する必要はないだろうと思うかもしれないが、この位置でカーソルキーを扱えれば、親指Fnキーと相まってホームポジションから指を離すことなく最速でカーソルを操作できるのである。
筆者はがんばって左手カーソルキー操作に挑戦してみたが、普段からW/A/S/Dキーを使うこともあって最初は違和感がすごかった。また、とくに文字選択をするときなどは、左Shiftを使うと一層混乱した。そのため、普段あまり使わない右Shiftに変えたりもしたが、時間をかければうまく扱えるようになるのは間違いない。
とは言え、この変態仕様に慣れると、ほかのキーボードを使ったときに弊害が出そうなのだが、使ってみるとかなり便利ではある。むしろI/J/K/Lで使えるようにしてほしかったとかわがままを言い出したくなるくらいだが、とにかく一蓮托生の覚悟がある人は継続利用して極めてみてはいかがだろうか。新たな境地にたどり着けそうだ。
そのほかの特殊な配置のキー
EscとカーソルキーがFnキーとの組み合わせで動作することを書いたが、このほかにもFnキーと組み合わせるコンビネーションキーがあったり、特定のキーが変わった位置にあったりする。
変換キーはFn+Space
「変換」キーはFn+Spaceで、「無変換」は左Fnの左隣に、「かたかな/ひらがな」キーは右Fnの右隣に用意されている。筆者はこれらのキーをまったく使わないので、この位置にあって使いやすいのかどうか判断できないのだが、おそらく普段から使っている人からするとやりにくいことだろう。
しかし、後述するDIPスイッチで左Fnを無変換キーに、右Fnを変換キーに変えることができるため、標準の日本語配列のように使うことは可能だ。ただし、この場合はもともとの無変換キーがFnキーとして動作するが、右のFnキーは代わりがないので使えなくなる。
Deleteキーが最下段にある
テンキーがないキーボードでは、たいていDeleteキーは右上に配置されているが、MINILA-Rについては最下段の右から2番目にある。DeleteキーはFnキーと組み合わせることで→キーとしても働くので、慣れていないのとカーソル操作時に間違えてDeleteになってしまうということが起こり得る。
とは言え、文字の削除などについてはBackspaceが標準的な位置にあるので問題にはなりにくそうだ。また、Fn+MキーがDeleteキーとして利用できる。さらに、英語配列限定ではあるが、Fn+¥(バックスラッシュ)キーでもDeleteキーとして働くため代用手段はある。
Bluetoothで4台のデバイスとペアリング
MINILA-RはUSBキーボードとしても動作するが、Bluetoothでなら最大4台までペアリングすることが可能だ。しかも切り替えは非常に簡単で、1~4番まである専用のペアリングボタンを押すだけだ。
ボタン部分はLEDになっており、ペアリング設定時については、ボタンを長押しすればペアリングモードなり、該当するボタンが青く点滅する。あとはOS側からBluetoothキーボードを見つけて接続するだけだ。
HHKB Professionalの場合は、「Fn+Ctrl+1」といったように、Fnキーを組み合わせたペアリングのためのショートカットキーが用意されているが、MINILA-Rのほうがシンプルでわかりやすい。
ボタンは常時点灯するわけではなく、接続するデバイスを切り替えたときは、そのデバイスの番号が青く3回点滅するようになっている。
ちなみに、USB接続に切り替えたい場合は、4番の右隣にあるUのボタンを押せば良い。さらにその右にはCapsLockとScrollLockのオン/オフを示すLEDがあるが、こちらは省電力化のためかUSB接続時にしか点灯しない仕様になっている。
なお、ScrollLockのLEDはBluetooth接続時に電池残量が少なくなったときに点滅して知らせる通知LEDにもなっている。
クセが強い異色のキーボードだが使いこなせれば間違いなく快適に
上でも述べたように、標準キーボードのファンクションキーやカーソルキー周りを取っ払ったような小型キーボードは、自ずとレイアウトに無理が出てしまうものだ。しかし、デスクの上のスペースを大幅に節約できたり、持ち運びも容易という小型ワイヤレスキーボードのメリットはとても大きい。しかも本製品は4台のデバイスとBluetoothでペアリングすることができる。
もちろん、Fnキーの使用を前提としたカーソル操作には慣れが必要であり、その点が購入のハードルになりやすいだろう。しかしながら、決して無理なレイアウトになっているわけではなく、指が覚えやすい位置に各カーソルキーが配置されている。そのため、慣れるのも早いはずだ。
基本4種類のキースイッチに日本語配列と英語配列、さらにカラーバリエーションも用意しており、ラインナップは多種多様。自分好みのキーボードを探しやすい。価格は17,380円と決して安くはないが、ライバルとなるHHKB Professionalが2万円台後半からであることや、その機能性を考えれば十分に検討価値のある価格だ。
Majestouch-MINILA-R-Convertibleは、メカニカルスイッチでワイヤレス接続の小型キーボードを求めている人にとっては、疑いなくドンピシャの製品である。
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August 05, 2020 at 08:00AM
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