米エピック・ゲームズの人気ゲーム「フォートナイト」が、突然App StoreやGoogle Playから削除されるという驚きの事態が起きた。アプリに独自の課金システムを導入し、規約違反となったことがその直接的な理由だが、エピック・ゲームズがそのような行動を取ったのにはアプリストアの手数料に対する根強い不満と、ストア側とアプリ開発者側との力関係の変化がある。問題解決の糸口は見いだせるのだろうか。
周到に準備し勝負を仕掛けたエピック・ゲームズ
バトルロイヤル型のTPS(三人称シューティングゲーム)でありながら、建物を建てるなどサンドボックス的要素を備えた特徴的なゲーム性で人気のフォートナイト。欧米を中心に社会現象となるほどのブームを巻き起こし、3億5000万以上のプレイヤーを抱える人気オンラインゲームとして知られており、最近ではアーティストの米津玄師氏がバーチャルライブイベントを実施したことから日本でも大きな話題となった。
それだけ大きな影響を持つフォートナイトを巡って、最近大きなトラブルが起きている。それは2020年8月14日にスマートフォンのアプリストアであるApp StoreやGoogle Playから、突然フォートナイトが姿を消したことだ。
その理由は課金システムにある。App StoreやGoogle Playで配信されているゲームの課金は各ストアの決済システムを通すよう定められているのだが、エピック・ゲームズはあえてそれを無視してアプリ内に独自の決済手段「Epicディレクトペイメント」を用意。そちらを経由してフォートナイト内で使える通貨「V-Bucks」を購入すると、最大20%の割引になるという施策を展開したのだ。
当然ながらこの施策はストア側にとってみれば規約違反行為となるため、両ストアは即刻フォートナイトを削除した。だが、これはエピック・ゲームズ側が意図的に仕掛けたものだったようだ。
実際、アプリストアからフォートナイトが削除されたタイミングで、同社は即時にAppleに対して訴訟を提起。さらに、かつてAppleが放映したSF小説「1984」を題材にしたテレビCMのパロディーを配信してプレイヤーにも支援を訴える「#FreeFortnite」キャンペーンを展開するなど、周到な準備をした上で今回の措置に至った様子がうかがえる。
手数料30%に不満、Androidでは独自でアプリ配信も
なぜエピック・ゲームズ側がこのような行為に出たのかといえば、同社がアプリストア側の手数料に対して以前より強い不満を訴えていたためだ。
App StoreやGoogle Playはデジタルコンテンツに対し、アプリ内での決済にストア側が用意した決済システムを使うことを求めており、基本的に売り上げのうち30%をストア側に手数料として支払う仕組みとなっている。この手数料に関しては以前より、アプリ開発者から「高い」と不満の声が多く挙がっているが、ストア側が見直しを検討する動きはほぼ見られなかった。
エピック・ゲームズ側はそうしたストア側の姿勢に強い不信感を抱いていた。実際、Android版のフォートナイトは長らくGoogle Playで配信せず、エピック・ゲームズのWebサイトで独自にアプリを配信することにより、Google Playの手数料を回避していたのだ。その後、セキュリティ面での問題を理由として2020年4月にGoogle Playでもフォートナイトを配信するようになったものの、手数料への不満を訴える姿勢は変わっていなかった。
だが、同社が最も不満を抱いていたのはApp Store、ひいてはAppleだったようだ。iPhoneをはじめとしたiOSデバイスではアプリの入手先が実質的にApp Storeに限られ、Androidのようにストア外でアプリを配信できないことから、手数料の問題を回避するすべがないというのがその主因であろう。
そこでエピック・ゲームズは、あえてストア側の規約を違反する形で独自の課金システム導入に踏み切り、よりストアの自由度が低いAppleを明確な“敵”として据えることにより、手数料問題をユーザーに広く周知するという“勝負”に打って出たわけだ。
それゆえ対象となったAppleも即座に対抗措置を取り、2020年8月18日、エピック・ゲームズに対して開発者アカウントの削除を予告している。エピック・ゲームズは多くのゲームアプリが使用しているゲームエンジン「Unreal Engine」の開発元であり、アカウントが削除されればiOS版Unreal Engineの開発が継続できなくなるだけに、影響が他のゲーム会社にも及ぶ可能性も出てきているのだ。
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フォートナイトだけでなはい、ストア手数料回避の動き
実は手数料30%の問題に明確に不満を示し、アプリストアを回避する動きを進めているのはエピック・ゲームズだけではない。実際、Netflixは2018年よりアプリストアでの課金を順次終了させており、自社Webサイト経由での課金へと一本化を進めている。また海外で人気のマッチングアプリ「Tinder」も、2019年7月に手数料回避のため、Google Play経由ではなくクレジットカード決済をデフォルトにするなどの動きを見せている。
より強い姿勢を見せているのがSpotifyだ。同社も以前よりApp Storeの手数料の高さを問題視しており、2019年にAppleが健全な競争を阻害しているとして欧州連合(EU)の欧州委員会に提訴。「Time to Play Fair」のWebサイトを公開して明確に抗議する姿勢を見せている。
そしてこれらサービスに共通しているのが、世界的な人気を獲得し、強力な顧客基盤を持つサービスだということ。多くの開発者が手数料に不満を抱きながらもアプリストアでの配信を続けてきたのには、全世界のユーザーにアプリを配信し、独自に決済手段を用意しなくていいといったメリットが、手数料のデメリットを上回っていたからこそだろう。
だが世界的人気を獲得したサービスであれば、アプリストアに頼らなくても十分な集客・決済ができることから、手数料への不満に明確なアクションを取ることができるようになったといえる。アプリストア側が強い立場でい続けられる状況ではなくなってきたことも、今回の騒動には影響しているといえそうだ。
ユーザー不在の泥仕合は避けられない?
エピック・ゲームズとApple、ともに明確な対抗姿勢を打ち出しており一歩も引く構えを見せていないだけに、短期的には解決が非常に難しいというのが正直なところ。このまま両社による訴訟合戦へと突入する可能性が高いだろう。
だが何度も触れている通り、アプリストアの手数料に対する開発者の不満は、古くから多く存在していたものだというのも事実。エピック・ゲームズくらいの規模の会社がここまでの対応を取らなければ、手数料の問題が議論の俎上(そじょう)に上がることさえなかったことを考えると、今回の出来事で何らかの見直しがなされることを期待するアプリ開発者は少なくないのではないだろうか。
ただ、その影響をもろに食らってしまうのがユーザーであるというのもまた事実であり、エピック・ゲームズの対応に否定的な声も少なからずあるようだ。当然のことながら最も影響を受けているのはiOSのフォートナイトユーザーであり、App Storeにフォートナイトが復活しない限り、iOSユーザーがフォートナイトの新しいシーズンをプレイすることはできないことから不満は少なくないだろう。
またiOS版のUnreal Engineが更新できなくなったとなれば、それを使用していたゲームの更新まで滞ってしまうかもしれない。ちなみにUnreal Engineを使用しているスマートフォンゲームとしては、「ウイニングイレブン」や「PUBG Mobile」「リネージュ2 レボリューション」などが挙げられ、両社の対立が続けばこうしたゲームにも影響が出る可能性があるのだ。
Appleに関連した訴訟といえば、分野は違うがAppleとQualcommが最近まで繰り広げていた訴訟合戦が思い起こされるだけに、今回の問題も妥協点が見いだされない限り長期化することも十分考えられる。ユーザー不在の泥仕合が続くことだけは避けてほしいところだが、その願いは届くだろうか。
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