超人気ゲーム『あつまれ どうぶつの森』の魅力とは?(写真:筆者スクリーンショット)
物心ついたときからゲームと付き合い続けてきた筆者が、その長いゲーム歴から最新作から過去の名作までを掘り起こして語り尽くす本連載。
今回取り上げるのは、世界中で人気を集める「あつ森」こと『あつまれ どうぶつの森』。同作を楽しめる人と、楽しめない人のちがいとは?
Nintendo Switchソフト『あつまれ どうぶつの森』は、2001年に発売されたNINTENDO64ソフト『どうぶつの森』に始まる人気シリーズの最新作だ。
シリーズ開始当初はゲームファンのみに知られた作品だったが、2005年に発売されたニンテンドーDSソフト『おいでよ どうぶつの森』は国内だけで販売本数500万本を突破するなど、今や任天堂のキラータイトルと言っても過言ではない。
「どうぶつたちと村での暮らしをのんびり満喫する」というコンセプトは、家族で1台ではなく、1人1台を持ち歩く携帯ゲーム機との相性が良かった。また、ネット回線を通じて友達の村を訪問できるという目新しさも広く受け入れられた。
その人気は決して日本だけにとどまらない。3月20日に発売した最新作『あつまれ どうぶつの森』は、3月末の時点で世界累計販売本数1177万本を突破。
新型コロナの影響で会えない友達同士がゲーム内で誕生会や卒業式を行うというトレンドが生まれたり、アメリカのメトロポリタン美術館が所蔵する美術品のデータをゲーム内で使える形で提供したことが話題になったりと、世界中から支持を集める本作。早速プレイしてみた。
開始早々「49800ベル」の借金を背負う
プレイヤーは「たぬき開発」が企画した「無人島移住パッケージ」の参加者の1人として、無人島に渡ることになる。
無人島に着いたら、自分のテントと、ほかの住民のテントを配置し、薪や果物を拾って、みんなでお祝いのキャンプファイヤー。
楽しい時間も過ぎて翌日。テントにたぬき開発の社長「たぬきち」が尋ねてくる。彼がそそくさと手渡してきたのは、島での暮らしをサポートしてくれるスマホと、無人島移住パッケージの請求書。そこには49800ベルの額が……。
はいきた! きました!! これがうわさのたぬきちの本性ですよ!!!
風の噂には聞いていた。どうぶつの森シリーズはのんびりスローライフと、さも楽しげに誘いながら、その実態は参加者を借金漬けにして返済のために強制労働させるというゲームだと。
プレイヤーは無人島で暮らすんだからお金なんて持ってきているはずがない。するとたぬきちは初期費用は「マイル」でも払えると言い出した。ああ、このマイルって間違いなく、カイジのペリカ的なやつだ。
と、冗談はさておき、プレイヤーは無人島の代表として、たぬきちのアドバイスを聞きながら、「無人島を発展させ、魅力的な島にしていくこと」にはげんでいく。
無人島での生活に必要なのが、「素材」と「ベル」と「マイル」だ。
素材は木を揺すったり切ったり、岩を叩いたりすることで手に入る。素材をDIYをすることで道具や家具を作れる。
ベルはあつ森内で使える通貨だ。主に島の虫や魚を捕まえたり、果物を売ることで手に入る。家具や服を買うため、そしてたぬきちに負わされた借金を返済するためにも必要となる。
マイルはほかのゲームでいうところの「実績」を積み立てたり、「デイリークエスト」をこなしていくことでたまっていく。機能をアンロックしたり、アイテム所持数の上限を増やしたり、プレイヤーキャラクターの髪型などを増やしたりするために必要だ。
マイルは一日外出券……じゃなかった。「マイル旅行券」に交換することもできる。マイル旅行券は、ランダムで離島に行くことができるチケットだ。
離島では、自分の島だけでは集めづらい素材が手に入る。特に序盤では、鉄鉱石を採取するためにお世話になるだろう。
プレイを進めるうち、島に博物館が建ち、売店ができると、いよいよ新しい住民を迎え入れることになる。
たくさんのどうぶつを自分の島に招き、花を植え、柵を立て、橋を架け、島全体がにぎわえば、いつかは、あの有名ミュージシャンの「とたけけ」がやってきてくれるはずだ。彼を招くことができれば、スタッフロールが流れてゲームの一通りはクリアということになる。
「あつ森」の醍醐味とは?
だが、ここまではあくまでもチュートリアル。ここから先は、川を作ったり崖を削ったりなど大規模な工事もできるようになる。もちろん、家具や服もDIYレシピも、まだまだいっぱい作り残している。理想の島作りはここから始まるのだ。
さて、本作は「自分が暮らす無人島と数年単位で付き合っていく」ことが基本となる。
あつ森では、現実とまったく同じ時間が流れており、無人島は四季折々の景色を見せ、季節や昼夜によって出てくる虫や魚も異なる。
だから、隅から隅まで遊び尽くそうとすれば最低でも1年はかかる。とにかく時間をかけて、ゆったりのんびりと無人島を自分好みにカスタマイズしていくのが、あつ森の醍醐味。だが、本当にそんなのんびりスローライフでプレイヤーは満足できるのだろうか?
あつ森は世界中で人気のコンテンツ。当然、多くのゲーム実況者がYouTubeなどにプレイ動画を投稿している。
彼らの投稿する動画内で紹介される無人島はすごいの一言に尽きる。まだ見ぬ家具や花、秋や冬にしか手に入れられない虫や魚なども当たり前のように揃っている。さらに島に住んでいるどうぶつも、人気のどうぶつばかりだ。
どうして発売から3ヵ月も経たないのに、レアなアイテムを揃えられているのか。
まず、彼らは多くの人たちと情報を共有し、アイテム交換なども積極的に行っている。また「時間移動」を利用する人も多い。無人島の時間はSwitch本体の時計を反映しているため、これを設定で変更すれば、無人島の時間もそれに対応して変化するのである。これは別にズルではない。過去のシリーズでも同様のことは行われてきた。
多くのゲーム実況者は、さまざまな手段を使って、情報やアイテムを集め、見栄えのするプレイを目指している。なぜなら彼らのプレイは「視聴者に楽しんでもらうこと」が目的だからだ。
そんな実況者の派手なプレイを見ていると、自分が無理なく進められる範囲で、ゆったりと島を開発するプレイは、どこか無味乾燥に感じてしまう。
そしてつい、自分も実況者たちのように効率よくアイテムを交換したり、見栄えのする島を作らなければならないのではないかと思いこんでしまう。
しかし、彼らの島は彼らの島。自分の島は自分の島である。明確なゴールが存在しないゲームだからこそ、自分がどんな島にしていきたいのかを強く思い描くことが重要だ。
あつ森世界を跳梁跋扈する「ナンパ師」
また、本作ではSNSなどを通じてインターネット上での物々交換できる。
フレンド登録している人はもちろんだが、見知らぬ他人でも、一時的に発行できるパスワードを用いて、インターネット経由で自分の島に招いたり、他の人の島にお邪魔することもできる。そこでレアなアイテムやレシピ、または住民などを交換するのである。
ただ、インターネットの世界にも悪人はいる。どうぶつの森シリーズは女性ファンも多いことから、彼女らを狙うナンパ師もいるので注意してほしい。
また、手に入れにくいアイテムの交換を持ちかけ、その対価としてのマイル旅行券やアイテムなどを受け取った瞬間に、インターネット回線を切断して、逃げてしまう詐欺師もいる。
ほかにも、人気のどうぶつや希少な資源などを現金取引で販売するRMT(リアルマネートレーディング)も行われている。
だが幸い、大半の人はこちらがルールやマナーを守りさえすれば、気持ちよく対応してくれるはずだ。仮にゲーム内のアイテムをだまし取られたり、暴言を吐かれても、それは「人生経験」であると考えればいい。
あつ森での経験を足がかりにすれば、ほかのゲームやSNSでも、インターネット上の見知らぬ相手とのコミュニケーションができるようになる。「お金は払わない」「個人情報を教えない」「安請け合いはしない」といった、基本的なマナーさえおさえておけば、少なくとも取り返しのつかないような被害はないはずだ。
「自発性」を刺激する優れたゲームシステム
最後に。あつ森では、プレイヤーがキャラクターを動かそうとしなければ、ただただ何もないままに時間は過ぎていく。プレイヤーは何もしなくてもゲームオーバーになることはないし、島には朝が来て夜が来て、季節も移り変わっていくだけだ。
何もしないことを否定するつもりはないが、やはり自発的に何か行動しようとしなければ、あつ森の一番楽しい部分は味わえないのではないか。だが素晴らしいことに、このゲームは常に「何かしよう」という仕組みがあふれている。
無人島はとても美しく、どうぶつたちはいつも楽しげだ。家具や小物は魅力的だし、服が集まれば、つい着飾ってみたくなる。プレゼント箱付きの風船が飛べば撃ち落として箱を開けたくなるし、蝶が舞い、魚が泳ぎ、虫が生きている。
DJ風な設備をあしらえた筆者の部屋(写真:筆者スクリーンショット)
この無人島ではどうしたって「何か」をせずにはいられない。そしてその「何か」は、大人にとっては日々から切り離された「ゆったりとした時間」であり、子供にとってはいろいろな誘惑に打ち勝ったり、知らない人とゲームを通してやりとりを学ぶという「冒険」なのである。
とてものんびりした、終わりのないゲームだからこそ「自分の楽しみ方」をしっかり持っている人であればあるほど、長期間、濃密に楽しめるゲームであると僕は理解した。
普段、僕はあまり誰かと一緒にゲームをすることはないけれども、もう少し背伸びをして楽しんでみようと思う。
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May 23, 2020 at 05:55AM
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