窒素ドープカーボンは、燃料電池の白金代替触媒や各種電池の部材として有望であり、次世代のエネルギー材料として注目されています。カーボン材料中において、ドーパント(不純物)である窒素の化学結合状態は性能に大きな影響を与えるため、精密な定性・定量分析法の確立が極めて重要です。従来の手法としてCHN元素分析法やX線光電子分光法(XPS)があります。しかし前者は窒素の化学結合状態を判別できず、後者は化学結合状態を分析できるものの表面近傍の情報しか得られない欠点がありました。また、両方とも分析感度は1,000ppm程度が限界でした。
東北大学 多元物質科学研究所の吉井 丈晴 助教と同大学 材料科学高等研究所(WPI-AIMR)の西原 洋知 教授、そしてカナダ・ブリティッシュコロンビア 大学のRobert Karoly Szilagyi 准教授らからなる研究グループは、窒素ドープカーボンの新たな分析手法として、2,100度に達する超高温TPD法を開発しました。今回開発したTPD法は従来の手法よりも2桁高い感度を持ち、窒素を10ppmレベルで定量することができ、材料内部に存在する窒素も精密に定性・定量分析することが可能です。
本研究成果は2024年4月29日(米国東部時間)、化学分野の専門誌「Chem」に掲載されました。
本研究は、JST さきがけ(JPMJPR23QA)、JST SICORP(JPMJSC2112)、JST CREST(JPMJCR18R3)、科学研究費補助金(JP20K22459、JP22J20735、JP20H02547、JP18KK0395)、「物質・デバイス領域共同研究拠点」における「人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンス」の共同研究プログラム、Scientific Grant Agency VEGA(02/0026/23)、Slovak Academy of Sciences(V4-Japan/JRP/2021/96/AtomDeC)の支援を受け実施しました。
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