外国人技能実習制度の見直しを巡り、転職制限を事実上、厳格化する修正案が政府の有識者会議で示された。転職制限を緩和することは人権侵害防止に向けた制度見直しの根幹部分だ。人権擁護に逆行する案は撤回すべきである。
技能実習制度は人材育成を通じた海外への「技術移転」が建前だが、実態は安価な労働力の確保に使われてきた。低賃金、長時間労働、雇用者の暴力など人権侵害が横行し、「人身売買」(米国務省報告書)との悪評が絶えない。
このため政府は、現行制度を廃止して2019年に創設した特定技能制度と一体的に運用できる新制度の導入を検討している。近く最終報告をまとめ、来年の通常国会での法改正を目指す。
技能実習生は現行制度では原則3年間は勤務先を変えられない。人権侵害から逃れるために失踪し、不法滞在者となった実習生は昨年も9千人に上る。転職(転籍)制限を緩和することが人権を擁護できるかどうかの試金石だ。
有識者会議事務局が先月示した最終報告の試案は、希望者には1年を超す就労と、日本語と技能の基礎試験合格を要件に、同業種内での転職を認めるとしていた。
しかし、今月15日に示された修正案には、特定の就労分野で2年目の待遇改善を条件に転職制限を「最大2年」に延ばせるという例外規定が盛り込まれていた。転職要件を事実上厳格化する内容で、結論は持ち越された。
転職要件を緩和する試案に対して、自民党内では「(高賃金の)都市へ人材が流出する」「企業の投資が生かされない」との反発が強い。修正案は自民党の意見に配慮したものだが、都市部への人材流出の懸念は、地方の最低賃金引き上げや労働環境、待遇の改善で対応するのが筋ではないか。
新制度は技能実習制度の目的を「人材の確保と育成」に変えた。人口の急減期に入った日本は、外国人労働者と共生する以外に選択の余地はないが、円安もあって新興国との外国人労働者の獲得競争は厳しさを増すばかりだ。
実習生を労働者として認めるなら、転職は当然の権利であり、転職要件の厳格化は人材確保や人権擁護という制度見直しの狙いとも矛盾する。政府が目標に掲げる外国人に「選ばれる国」を本気で目指すなら、人権尊重こそ、その要であることを理解すべきである。
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