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【戻せ恵みの森に ―原発事故の断面―】第5部 山の恵み(36)タラノメ農家苦境 風評で価格低迷続く | 福島民報 - 福島民報

来季の収穫に向けてタラノキの手入れをする黒江さん。原発事故による風評を痛感している
来季の収穫に向けてタラノキの手入れをする黒江さん。原発事故による風評を痛感している

 川俣町中心部から東へ車で約十五分。山あいの道を進むと、下追戸地区が見えてくる。「福島の山菜の品質は日本一。自信はあるけど、まだ買いたたかれたままだ」。農業黒江績(いさお)さん(57)は四月下旬、一ヘクタールほどの畑で、タラノメが収穫できるタラノキを手入れしながら声を落とした。

 黒江さんは養蚕と原木シイタケで生計を立てる農家に生まれた。川俣高を卒業後、原木シイタケ向けの菌を販売する会社に就職。二十七歳で家業を継いだ。最盛期には年間約一万本の原木シイタケを扱い、十トン近くの収量を誇った。だが、就農三年目あたりから、安価な中国産の輸入が急拡大し売り上げは徐々に減少した。より利益率の高いタラノメの生産に軸足を移すことにした。

 畑で育てたタラノキをハウスに移し、水耕栽培してタラノメを収穫する。東京電力福島第一原発事故発生前は、栽培ものの他に自宅近くの山に自生していた野生タラノメを収穫し、地元の飲食店などに提供していた。野生ものは大ぶりで喜ばれていたが、原発事故発生後は出荷できなくなった。今も山に自生のタラノキはあるが、放置せざるを得ない状況だという。

 川俣町一帯はタラノメ生産が盛んで、全国に名を知られていた。鮮やかな色味や形の美しさなど、農家が切磋琢磨(せっさたくま)し生み出した努力の結晶は高い評価を受けていた。一九九五(平成七)年の年間販売額は一億三千五百万円に達していた。しかし、原発事故で大きな打撃を受けた。

 JAふくしま未来によると、福島地区山菜専門部会のタラノメ出荷量は二〇一〇年度、十三万四百四十三パック(一パック五十グラム)に上った。だが、原発事故発生後の二〇一一年度は九万二千八百八十三パック、翌年度はその三分の一程度の三万二千四百六十八パックに落ち込んだ。

 二〇一二年度の単価は一パック当たり百四十三円で、山形、群馬両県産より数十円安かった。原子力災害対策特別措置法に基づき、野生ものの出荷制限は今も続いているが、黒江さんは除染済みの畑とハウスで栽培しているため、出荷が継続的に認められており、放射性物質検査でも安全は確認済みだ。だが、今も他産地とは価格に開きがある。「これが風評なのか」。市場の評価は、黒江さんに厳しい現実を突き付けている。

 風評による価格の低迷は生産者の減収につながり、生産意欲をそいでいる。

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