世界最高解像度でWindows MRとSteamVR
HPが世界最高解像度を謳うVRヘッドセット「HP Reverb G2 Headset」が発表されたのは今年(2020年)5月のこと。発売は少し先に延びてしまい、直販サイトでは2021年1月中旬販売開始とされている。
本機は片眼2,160×2,160ドットという非常に高い解像度と、外部のトラッキングセンサーを必要としないインサイドアウト方式のセンサー、6DoF対応のコントローラを備えて、税別直販価格5万9,800円という意欲的な価格設定になっている。
筆者が本機に注目している理由は、性能や価格のほかにもう1つある。本機はHPとValve、Microsoftが共同で開発している点だ。ValveはSteamVR、MicrosoftはWindows MRを抱えており、それらに間違いなく対応するという保証がある。
筆者がはじめてVRデバイスを手に入れたのは、2017年初頭のこと。当時最新だった「HTC Vive」を購入し、およそ4年経った今も現役で稼働している。性能にもおおむね満足しているが、もし新機種にアップグレードするなら、Steamライブラリを腐らせないためにも、SteamVRへの万全の対応が必須だ。
ということで、今回はHPから借りた「HP Reverb G2 Headset」の評価機を使い、「HTC Vive」ユーザーの目線でチェックしていきたい。
眼鏡もOK。長時間の利用でも快適な装着感
本機の装着するさいは、まず側面にある左右の面ファスナーを剥がして、後部を伸ばす。次にヘッドセットのフェイスマスクを顔に当て、左右の面ファスナーを引いて、後部を密着させる。また頭頂部にも面ファスナーがあり、かぶる深さを調節できる。
筆者は近視のため眼鏡をしたままVRヘッドセットを使うのだが、本機はフェイスマスクの幅にかなり余裕があり、大きめの眼鏡でも難なく収まった。とくに左右に余裕があり、装着中もあまり眼鏡が圧迫されないので、装着時に眼鏡がずれてヘッドセットから着け直したりといったこともほぼない。眼鏡ユーザー的には相当よくできていると感じる。
サウンドは耳の横にあるスピーカーから再生される。耳に密着しないタイプなので、外に音は漏れることになるが、その分、開放感があって快適だ。音質もまずまずで、ゲームや動画も違和感なく利用できる。
フェイスマスクと後部にはクッション性の高い素材が使われており、これで顔を前後からはさむかたちになる。そのおかげか装着感はとても良好。ケーブルを除いて約500gという重さは決して軽くはないものの、ホールド感がいいおかげで長時間の装着でも不快感が少ない。とくに後部にもクッションがあるので、頭を締めつける感じがとても少ないのが好印象だ。
肌に接するクッション部分は、柔らかくさらさらした素材の布が使われている。季節が冬場なので汗の影響が少ないのもあるとは言え、接触部分に熱がこもるような感じもなく、肌触りもいい。
装着感の点では、本機はとてもよくできていると思う。それなりの重さがあるのは致し方ないとして、それを感じさせないよう装着感でうまくカバーしている。とくに長時間の連続使用が想定される人は、とても大きな恩恵に感じられるはずだ。
世界最高解像度でお気に入りのVRアプリが再び目覚める
次は筆者が気に入っているVRアプリを試しつつ、本機の気になる部分を見ていきたい。
筆者が真っ先に試したかったアプリが、「Welcome to Light Fields」。Googleが特殊なカメラを使って撮影した360度3D写真の空間に、入り込むような感覚を味わえる。本作はとても映像が美しいのだが、「HTC Vive」だと解像度が若干足りないように感じられた。
早速見てみると、やはり想像どおり。「HTC Vive」で見たより鮮明な画像が目の前に広がった。特徴的なのが、スペースシャトル・ディスカバリー号のコクピット写真。無数にあるスイッチのわずかなおうとつがはっきりと見え、リアリティが圧倒的に増している。
実際に映像を見ていると、単純に映像が高精細になったというより、画素1つ1つのドットが見えなくなったという印象のほうが強い。ドットが見えないということは、デジタルくささを感じさせる部分が減り、より現実世界を見るのと感覚が近くなる。「Welcome to Light Fields」のような映像コンテンツでは、格段にリアリティが高まる。
ただし、視野角はそれほど大きな変化はない。丸眼鏡を通して世界を見ている感覚は相変わらずで、そこがVR映像コンテンツでは違和感として残る。ちなみに本機の視野角は114度、「HTC Vive」は110度とされており、そう言われると若干改善したかもしれない……という程度の違いだ。
次はValve制作のVRゲーム「The Lab」。いくつかのミニゲームをまとめたコンテンツだが、筆者はそのなかの1つ「Xortex」というシューティングゲームが大のお気に入りである。コントローラを宇宙戦闘機に見立て、フィールドの四方八方から現れる敵を撃って破壊し、敵弾を手の動きでかいくぐっていく。VRでしかできないゲームだ。
この作品はコントローラをすばやく移動したり、上下左右に大きく動かしたりする場面が多い。敵弾をかいくぐる緻密な動きが求められることもあり、コントローラのポジショントラッキングの精度を見るのにも良さそうだと思った。
実際にプレイしてみると、プレイにまったく違和感はなかった。コントローラのわずかな動きもきちんと認識しているし、上下左右に大きく振っても正しく追従してくる。トラッキング用のカメラを正面に2つ、左右側面に1つ搭載したことで、とくに左右の追従性は高くなっているものと思われる。
2つのコントローラは右手用と左手用が分けられている。使用時に左右どちら用か確認は要るが、手のかたちに合わせた形状のおかげでしっかり握れる。そのおかげで、親指で操作するアナログスティックの操作も快適だ。また重心が持ち手部分にあり、先端部分は見た目によらず軽いので、激しい動きでも手の負担が小さい。
3つ目はメディアプレーヤー。個人的に撮影した360度カメラ写真や、普通の2D動画など映像はいろいろあるが、どれも「HTC Vive」で見ると解像度不足で満足いかなかった、
早速見てみると、やはり解像度は十分。手元の360度写真の解像度はおよそ4Kだったが、本機で見ると今度は写真のほうの解像度が物足りなく感じられてくるほど。また2D動画をシアター風表示にしてみたところ、十分楽しめるレベルになった。
映像コンテンツは、スタンドアロンで動作するVRヘッドセットのほうが軽くて視聴には適しているのだが、本機であればより高い解像度、かつパソコンから直接読み込めるので手間がないというメリットがある。さすがに2D動画は、わざわざ500gのヘッドセットをかぶらずディスプレイで見ればいいと思うが、ちょっとした気分転換にはいいかもしれない。
このほか、筆者所有のいくつかのVRゲームもプレイしてみたところ、「HTC Vive」でのプレイ時とほぼ同等のプレイ感で、フレームレートの低下などは感じられなかった。ただ、重めのゲームの一部では、描画が一瞬止まるような場面も見られた。
筆者のプレイ環境は、Core i5-6600とGeForce GTX 1080、メインメモリ16GBという少々旧式のパソコンなので、解像度の向上による負荷の増加にギリギリ対応できるかどうかのラインなのだと思う。何がボトルネックになったのかははっきりしないが、よりヘビーなVRゲームをプレイしたいのであれば、ビデオカードの交換くらいは考慮してもよさそうだ。
解像度だけじゃない! スペックからはわからない使い勝手のよさ
本機は何より解像度の高さが売りのように見られがちだが、ひととおり試してみると印象が変わる。各所の作りがとてもよく、セットアップから装着感まで、ソフト・ハードの両面でとても完成度が高い。とくに筆者のように旧式のVRヘッドセットを持っている人には、本機のありがたみがよくわかるはずだ。
旧式のVRヘッドセットからのアップグレードパスとしてはもちろん、今までパソコンでVRを使ったことがない人にも十分おすすめできる。Windows MRとSteamVRに確実に対応する点も、パソコン用VRヘッドセットとしてはとても安心だ。税別5万9,800円という価格も、競合製品と同等ないし安価なくらいで、製品品質を考慮すれば競争力はかなり高い。
もちろん映像の精細さについてはまったく文句のつけようがない。「HTC Vive」の時も、「このくらいの解像度があればいいかな」と感じたが、画面が網目状に見えるスクリーンドア効果が少なからずあった。本機ではそれらの問題をまったく感じず、とても自然な映像が楽しめる。
逆に言えば、これ以上の解像度はもう要らないとも感じる。VRヘッドセットとしてのオーソドックスな性能向上は、本機でもう十分。この先は広視野角や軽量化、映像の無線化など、新たな付加価値を得る方向に進化してほしいと思う。
なお注意してほしい点として、本機はあくまでもパソコンに接続して使用するもので、スタンドアロンでは動作しない。VR界隈では少し前に「Oculus Quest 2」がおおいに話題になったが、こちらはスタンドアロンで動作するもの。同じVRヘッドセットでも使い方が異なるのでご注意いただきたい。
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December 10, 2020 at 04:45AM
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