イタリアのDTM系ハードウェア、ソフトウェアを手掛けるメーカーに、IK Multimediaがある。ハードウェアにおいてはiPhone/iPad用デバイスのイメージが強かった気もするが、最近は「iLoud MTM」など、プロユーザーも好んで使うモニタースピーカーを出したり、オーディオ出力を可能にしたMIDIキーボード「iRig Keys 2シリーズ」を出したり、また「UNO SYNTH」のようなシンセサイザなど、幅広い製品をラインナップしている。
そうした中、かなり目立つ存在になってきているのが同社のオーディオインターフェイス製品だ。スマホのヘッドセット端子にギターを入力できるようにした「iRig 2」から、ネット配信用の「iRig Stream」、さらには高性能なギター入力機能を装備する「AXE I/O」までさまざまなニーズに合わせた製品を出している。
今回はその最上位機種である「AXE I/O」(実売5万円前後)、そしてコンパクトなモバイルオーディオインターフェイスである「iRig Pro Duo I/O」(同2.95万円前後)の2機種をピックアップし、これらのオーディオ性能についてチェックしてみることにしよう。
ギター用に作られた2in/5outのUSBオーディオ「AXE I/O」
2020年9月現在、IK Multimediaのオーディオインターフェイスの現行製品としては……
- AXE I/O
- AXE I/O Solo
- iRig 2
- iRig HD
- iRig Pre
- iRig Pre HD
- iRig Pro Duo I/O
- iRig Pro I/O
- iRig Stream
- iRig UA
……といろいろある。マイク機能搭載の製品を含めれば、さらに多くのラインナップがあるわけだが、その中で最高峰に位置づけられるのが、2019年1月にリリースされたAXE I/Oだ。
192kHz/24bitまで使えるUSB 2.0に対応したオーディオインターフェイスで、2in/5outというちょっと変わったスペックを持つ。これだけ数多くのメーカーが参入するオーディオインターフェイスの世界だから、やはり独自色を出さないと生き残れないわけだが、このAXE I/Oはギタリスト向けという点を前面に打ち出した製品となっている。
最大の特徴はフロント左側のギター用入力端子にZ-TONEなるパラメーターが用意されていること。Z-TONEのZは入力インピーダンスを表すもので、その入力インピーダンスの値を調整できるようになっている。具体的には2.2kΩ~1MΩの範囲で調整でき、この値によってギターサウンドが変化するわけだ。
電気的にいうと、ギターの出力インピーダンスとオーディオインターフェイスの入力インピーダンスがピッタリと合う、インピーダンスマッチングの状態がベストと言われているが、その調整を行なうことができるユニークな機材となっている。
もっとも、どこでインピーダンスマッチングするかを調べる術はないので、自分で音を聴きながら……ということになるのだが、実際にZ-TONEパラメーターを動かしていくとかなりサウンドが変化するのを実感できるので、あとは好みで調整することになる。
Z-TONEのツマミの下にPASSIVE/ACTIVE、およびJFET/PUREという切り替えスイッチがある。これもギターサウンドに大きな影響を与えるスイッチとなっているのだが、PASSIVE/ACTIVEはギター側がアクティブピックアップなのか、普通のピックアップなのかを選ぶことができる。
JFET/PUREのほうは、FET型のトランジスタを通した音にするか、自然な音にするかを選択するためのものになっている。取り込んだギターのサウンドにさまざまな信号処理をして音を変化させるエフェクトは数多くあるが、取り込む時点でこれだけ多くのパラメーターを持っている製品はほかにないはずだ。
フロントパネルにあるツマミやスイッチ以外にも各種設定を行なうAXE IO Control Panelというものがあり、ここでサンプリングレートやバッファサイズ、ダイレクトモニタリングに関する設定、オーディオ出力レベルの設定ができるほか、フットペダルなどの設定もできるようになっている。
AXE I/Oが2in/5outという妙な仕様であるのは、5チャンネル目としてギターアンプへ送るための専用出力があるためだ。フロントの右側にAMP OUTという端子がそれだ。いわゆる“リアンプ”を行なうためのもので、すでにレコーディングしたギターサウンドをここから出して、ギターアンプへと持っていき、そのアンプから出た音をマイクなどを通じて再度録音するのを目的としている。
IK Multimediaとしての本命の機能ともいえるのが、実は付属ソフト。AXE I/Oには単体で購入すると約3.6万円(税込)する「AmpliTube 4 Deluxe」というソフトが付いてくる。これと高い連携性を持っているというか、AmpliTubeを最大限活用できるオーディオインターフェイスとしてAXE I/Oが開発されたというのが実情でもある。
以上のように、ギターとの関係性を紹介してきたAXE I/Oだが、本連載でチェックするのはギター入力ではなくライン入力。普通のオーディオインターフェイスとしてみたときどんな性能なのか、いつものようRMAA Proを用いてチェックしていく。
リアを見ると、4系統のライン出力のほかに、マイク入力とライン入力を兼ねるコンボジャックの入力端子が2つある。このライン出力とライン入力を接続してループ状態にした上で、RMAA Proを用いて44.1kHz、48kHz、96kHz、192kHzのそれぞれのサンプリングレートでテストした結果(周波数特性)がこちら。
AXE I/Oはギター用途ということで、あまりハイファイなサウンドは期待していなかった……というのが正直なところ。しかし実際に試してみると、どのサンプリングレートでの結果も非常に好成績であり、ギターの話を抜きに考えても、十分導入する価値のあるオーディオインターフェイスといえそうだ。
では、レイテンシーはどうだろう? いつものようにCEntranceのASIO Latency Testを利用して、WindowsでのASIOレイテンシーをチェックした結果が下記の画像だ。44.1kHzだけはバッファサイズ128サンプルのものと、最小値。それ以外のサンプリングレートではすべて最小値での実験結果となっているが、まずまずの好成績といったところだろう。
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September 07, 2020 at 08:54AM
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