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新型の13インチ「MacBook Pro」は優れているが、すべてが“バラ色”というわけではない:製品レヴュー - WIRED.jp

この5年間はアップルのノートPCにとって厳しい時期だった。すべての問題が始まったのは、2015年に導入されたバタフライキーボードからである。

このキーボードの導入は、「MacBook」のスリム化をさらに進めて持ち運びやすくしようというアップルの挑戦だった。ところが、あまりにもろい構造であったがゆえに、わずかなほこりが入っただけでひとつのキーが完全にダメになることもあったのである。

のちにアップルは設計に何度か手を加えたが、MacBookの評判はすでに悪くなっていた。そして“欠陥”のあるキーボードのせいで消費者の信頼が損なわれ、集団訴訟も何件か起きた。しかもアップルが施した修正は、解決策というより対症療法に近かった。

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しかし、それも過去のことだ。新型の13インチ版「MacBook Pro」では、バタフライキーボードの問題がついに“根絶”された。

実際のところ、アップルは新しいMacBookを発売するたびにバタフライ構造を廃止し、このモデルの発売を機にバタフライキーボードを採用したノートPCの販売を完全に終了している。そして童話『ゴルディロックスと3匹のくま』で主人公が味見した粥のごとく、MacBookシリーズで最後に刷新されたこのモデルが、いちばんの個人的なお気に入りとなった。

大きく分けてふたつのモデル

13インチモデルは16インチの「MacBook Pro」ほどかさばらず、「MacBook Air」より処理能力が高い(そしてポートも多い)。だが、最新のMacBook Proのすべてがバラ色というわけではない。バッテリーのもちはギリギリ合格といったところだし、アルミボディは熱くなることが多い。そして、本当の実用性を得るにはかなりの出費を強いられる。

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このモデルの構成は少し複雑なので、きちんと精査しなければならない。13インチ版「MacBook Pro」には、大きく分けてふたつのヴァージョンがある。USB-C(Thunderbolt 3)ポートをふたつ備えたモデル(1,299ドル、日本では13万4,800円)と、4つのポートを備えたモデル(1,799ドル、同18万8,800円)だ。

両者の違いはポートの数だけではない。価格が安いほうのモデルは256GBのストレージ(上位モデルは512GB)を搭載し、グラフィックカードの性能が少し劣る。低価格モデルはインテルの「Iris Plus Graphics 645」、高価格モデルは「Iris Plus Graphics G7」だが、それにしても紛らわしい名前である。

そして低価格モデルはRAMの速度が遅く、容量も小さい(8GB、2,133MHz、LPDDR3メモリー。高価格モデルは16GB、3,733MHz、LPDDR4Xメモリー)。最も重要な点として、低価格モデルが第8世代のインテルプロセッサーのままであるのに対し、高価格モデルは最新の第10世代チップを採用している。ベースモデルの価格が「MacBook Air」に近いという事実も、どちらのヴァージョンを買うべきか迷う原因となる。

MacBook Pro 13

PHOTOGRAPH BY APPLE

Airの上位モデルか、Proの低価格モデルか

その選択の参考になる情報を教えよう。主な用途はネットサーフィンではあるがアップル製のノートPCが欲しいなら、「MacBook Air」のベースモデル(999ドル、日本では10万4,800円)を買うといいだろう。仕事でブラウザーのタブをいくつか開いておくためにもう少しパワーが必要なら、「MacBook Pro」の基本モデル(1,299ドル、同13万4,800円)がおすすめだ。

ちなみに、なぜ「MacBook Air」の上位モデル(1,299ドル、同13万4,800円)ではないのか。「Pro」は画面が明るく、色も忠実に再現されるからだ。

それにAirとProには、バッテリーのもちや重量の違いもほとんどない。Proのキーボードの上にある細いデジタルディスプレイ(「Touch Bar」)が嫌いで、その場所に物理的なキーが欲しいと思うなら(それはもっともなことである)、Airの上位モデルを買う唯一の理由となるだろう。それでも、ほとんどのユーザーは上記のふたつの選択肢から選ぶべきだ。

ノートPCにドングルやハブを頻繁に接続したり、映像や写真を編集したり、負荷のかからないゲームをしたりするなら、個人的にも使っている「MacBook Pro」をお勧めする。今回は高価格モデルの「Core i5」版を試用したのだが、全体的によく改良されており、より高性能な(そして高価格の)16インチ版「MacBook Pro」ほど扱いづらくはなかった。

軽さや携帯性という魅力

13インチ版のMacBook Proでは、ほぼすべての作業を比較的楽にこなすことができた。例えば、「Counter Strike: Global Offensive」を最下位で何回か終えるのは、合格。「Adobe Premiere Pro」で15分間の4K映像を編集するのも合格。このレヴュー記事の執筆中に「Chrome」のタブを32個開いておくのも合格だった。いまのところ、性能面で大きな問題はない。負荷のかかる作業のときにはファンがうるさくなるが、前に使っていたモデルほどではない。

本格的な映像編集や色の調整など、集中する必要がある作業なら16インチのMacBook Proをお勧めする。もしくは、専用のGPUを搭載したノートPCがいいだろう。

16インチモデルに内蔵された「AMD Radeon Pro」は、13インチ版の「Iris Plus Graphics G7」より桁違いに速い処理が可能だ。個人的には映像や写真の編集は趣味の域をほとんど出ないので、普段使いにそれほど強力なマシンは必要ない(13インチモデルで「DaVinci Resolve」や「Final Cut Pro」を使ってみるとわかるだろう。「Adobe Premiere Pro」は完全に最適化されていないようだった)。

16インチモデルが示す実力は楽しめたが、13インチモデルの軽さや携帯性のほうがはるかに魅力的である。PCをバルコニーに持ち込んだり(最近は外の空気を楽しむための習慣になっている)、ソファまで持っていったりということを無意識にやるようになった。16インチ版のときは、しばしば机に張り付いたままになっていたものだ。

キーボードは素晴らしい

このほか、4つのUSB-Cポート(それにヘッドフォンジャック!)があるのは助かる。特にポートがふたつだった「MacBook Air」から乗り換えた場合は、なおさらだろう。だが、ここで前にも指摘した点を繰り返しておきたい。これだけ高価なモデルなのだから、ポートの選択肢がもっとあってもよかった。USB-AポートやSDカードリーダーがあれば、大いに有用だろう。

画面はくっきりしており(解像度は2,560×1,600ピクセル)、色合いも豊かだ。最も重要な点として、日当たりのいいバルコニーでもよく見える。窓に背を向けた状態だとギラついて見えるので、ディスプレイの光沢はもう少し抑え目のほうがよかった。とはいえ、この問題は画面の角度を変えることで簡単に解決できた。

MacBook Proでアニメ「アバター 伝説の少年アン」を視聴してみたが、動作不良の古い窓用エアコンのブーンという音に負けずに会話を聴き取ることができた。また、本体のステレオスピーカーで大音量で再生したみたところ、これまでに試したほとんどのノートPCよりも音質がよかった。大きな部屋も満たせるくらいの音量だし、大部分の安いBluetoothスピーカーの代わりにもなる。普段はガジェットにほとんど関心を示さないパートナーも、オーディオの質や音の大きさについて2回も感想を言ったほどである。

そしてもちろん、「Magic Keyboard」もある。アップルがデスクトップのMacとセットで販売しているキーボードと同じ名前が付いているが、これは両者の内部構造がほぼ同じであるがゆえだ。タイピングした感触は素晴らしい(とはいえ、私物のメカニカルキーボードほどではなかった。念のため)。押し応えも合格点である。

試しに16インチモデルや新型MacBook Air、そして今回の13インチ版Proキーボードを比べてみたところ、新しい設計のキーの下にある従来型のシザースイッチには違和感がなかった。しかし、これは今後も注視していきたいポイントではある。

MacBook Pro 13

PHOTOGRAPH BY APPLE

バッテリーのもちは悪くはないが…

コンセントにつながずに長時間使えるノートPCを探しているなら、今回のモデルは向かない。16インチ版のMacBook Proや、デルの「XPS 13」のような競合モデルを使うべきだろう。

関連記事製品レヴュー:デルの「XPS 13」2020年モデルは、高性能でもち運びやすい最高の選択肢になった

バッテリーのもちに関する個人的な体験は、MacBook Airを使っていたときと非常に似ている。もしくは、やや悪い。普段は朝9時から働き始めるが、ほとんどの時間をSafariやChrome、Slack、Telegramに費やしている。そしてたいていの場合、午後3時半や4時までコンセントにつないでおかなければならない。ゲームについて言えば、「Counter Strike」を45分プレイしただけで、バッテリーが88パーセントから15パーセントにまで減ってしまった。

わたしたちの標準的なバッテリーテストでは、Wi-Fi環境でフルHD画質の映像を画面輝度70パーセント程度でループ再生する。この条件では、13インチ版MacBook Proは約8時間もった。これはテストしたCore i5の「MacBook Air」と同等だ。16インチのMacBook Proは、それを上回る11時間半だった。参考情報として、デルのXPS 13は12時間半もった。13インチモデルの成績は悪くない。だが、もっと改善できるはずだ。

ウェブカメラは改善すべき

その意味では13インチ版の高価格モデルについても、アップルが改善すべき点がいくつかある。まずはウェブカメラだ。これは優れた性能とは言い難い。ビデオ会議をする人は以前より増えているのだから、互いの姿をフルHD(1080p)で見ることができたら素晴らしいことだろう。

しかも顔認証システム「Face ID」でもログインできるようになれば、なおいい。指紋認証の「Touch ID」も悪くはないが、個人的にはカヴァーを開いてすぐにロック解除される「iPad Pro」の感覚に慣れている。iPadでの体験は「MacBook」でもうまく作用すると思う。

個人的には、ノートPCにタッチスクリーンは求めていない。だがアップルは、スクリーン周囲の枠をもっとスリムにできたはずだ。そうすれば、14インチの「MacBook Pro」が13インチ版のサイズで実現できたことだろう。これは16インチモデルが以前の15インチモデルと同じ大きさであるのと同じことだ。画面が大きくなるのは素晴らしいことである。

そして、しばらくネットを閲覧しただけで、トラックパッドの左右の表面がかなり熱くなることがよくある。手のひらが熱くなるのは好きではないので、少しクールダウンするためにPCから離れることもあった。

「良質なノートPC」であるということ

だが、アップルにいちばん求めているものは別にある。新しいMacBookシリーズのラインナップは、長い歴史のなかで最高峰に位置するが、すべてのモデルが少し退屈でもある。

退屈が悪いとは言わない。安定や信頼性には「退屈」のレッテルがつきものだ。そしておそらく、ゴルディロックスのごとく甘やかされてしまっている。「このノートPCは退屈すぎる」「あのモデルは重すぎる」といった具合にだ。

しかし、かつてMacBookが常に限界に挑戦し、ノートPCの可能性を再定義し続けていた時代があった。それがいまでは、ただの「良質なノートPC」になってしまったのである。

◎「WIRED」な点

性能は良好。改良されたキーボードは申し分ない。スリムで軽く、持ち運びは容易だ。素晴らしい13インチのディスプレイと優秀なスピーカーを備えている。多数のUSB-Cポート(出費を惜しまなければ)も便利。アップル製品らしい堅牢なつくり。

△「TIRED」な点

バッテリーのもちは改善の余地あり。ポートの種類が少ない。本体に触ると熱いことがよくある。ベースモデルには旧式のプロセッサーが使われ、ポートはふたつのみ。個人的にはTouch Barより物理的なファンクションキーが好み。

※『WIRED』によるアップルの関連記事はこちら。ガジェットのレヴュー記事はこちら

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