新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、Veeam Softwareは自社イベント「VeeamON」をオンラインイベントに切り替えて6月17~18日(米国時間)に開催した。このイベントで発表されたのが、「Veeam Backup for AWS v2」「Veeam Availability Orchestrator v3」と、「Veeam Availability Suite v11」「Veeam Backup for Office365 v5」のプレビュー版だ。
今回、これら4製品の注目ポイントと同社が目指す方向性について、本社の最高技術責任者(CTO)兼製品戦略部門シニアバイスプレジデント、ダニー・アラン(Danny Allan)氏がインタビューに応じた。
アランCTOは、クラウドのデータ管理を提供していくベンダーとして「使い方はシンプルに、日本のユーザーが求める信頼性を実現する」と強調した。
自社イベントで2つの新製品を紹介
「Veeam Backup for AWS v2」は、Amazon Web Services(AWS)環境のディザスタリカバリ(DR:災害対策)として、AWSアカウントおよびリージョン間でAmazon Elastic Block Store(EBS)スナップショットのレプリケーションとリカバリを行い、リージョンの停止から保護するものだ。
新たにリリースされた、変更ブロックトラッキング(CBT)APIとの統合を実現。バックアップウインドウを短縮し、コンピューティングとストレージの費用を削減する。実行中のAmazon EC2インスタンスを対象としたアプリケーション整合性スナップショット、およびバックアップ接続しているAmazon EBSボリュームをシャットダウンや切断する必要がない点も特徴という。
またパブリックRestful APIは、外部アプリケーションとワークロードにセキュアに接続し、Veeam Backup for AWSを統合・管理できる。
なおVeeam Softwareは、AWSパートナーネットワーク(APN)におけるAWSストレージコンピテンシーステータスを取得した。「Veeamは、AWSに移行するデータとAWSクラウド上のデータを、効率的に移動・利用・保護するためのテクノロジーを評価、実装することにより、ユーザーを支援し成長してきた」と、アランCTO。具体的にはアーカイブ、バックアップとリストア、事業継続性とディザスタリカバリ(BC/DR)、プライマリストレージなどを提供している。
「Veeam Availability Orchestrator v3」では、コストを最大80%削減しながら、全ワークロードが対象の専用DR計画、およびコンプライアンスソリューションを直ちに導入できるようになる。どのワークロードを保護の対象から外すかを判断する必要がなくなり、DRと事業継続性(BC)を飛躍的に合理化、向上するという。
今回のバージョンで、NetApp ONTAPスナップショットの完全なリカバリオーケストレーションをサポートした。アレイベースのレプリケーションからの広範な復元オーケストレーション機能、ストレージオーケストレーションプランが追加されており、この新機能を利用することで、セカンダリ復元サイト(DRサイト、データセンターマイグレーションの場合は新規データセンター)へのNetApp ONTAPストレージのフェイルオーバーをオーケストレーションできるとした。
また、ユーザーが必要なレベルのDR計画とコンプライアンスを実現する独自の機能セットを提供。サイト全体を対象としたディザスタリカバリプランの自動的なテスト、動的な文書化、実行を単一アプリケーションから1クリックで行うことができる。加えて、新しいDR Packで、専用のDR計画およびコンプライアンスを直ちに提供する。
提供開始は、今後30日以内を予定している。
2製品のプレビュー版も公開
新バージョンのプレビューが公開されたのが、「Veeam Backup for Microsoft Office 365」と「Veeam Availability Suite」だ。
このうち「Veeam Backup for Microsoft Office 365 v5」は、テレワーク、在宅勤務への移行が急増したことを受け、より簡単にMicrosoft Teams内の文書やファイルを素早くリストアおよび検索できるようになった。
TeamsのネイティブAPIにより、Teamsのデータ以外にもチャンネル、設定、タブを保護。リストアはTeams専用に設計され、高速かつ簡単なリカバリエクスペリエンスを提供する。eDiscoveryでは、Teamsコンポーネント全体を対象とした詳細な検索を可能とした。提供開始は2020年第3四半期を予定しているとのこと。
一方、「Veeam Availability Suite v11」の新機能は、Near Continuous Data Protectionによって、VMware vSphereワークロードの、秒単位のRPO(目標復旧時点)によるVMレプリケーションを可能とした。
加えて、Google Cloud Storageのキャパシティ層のサポートにより、クラウドを利用してスケールアウトバックアップリポジトリ容量を拡張。さらに、AWS Glacier、AWS Glacier Deep Archive、Microsoft Azure Blob Storage Archive Tierのアーカイブ層のサポートによって、長期的な保持コストを削減する。
このほか、Microsoft Hyper-V VMへの任意のバックアップのインスタントリカバリ、NAS Backupコンテンツのインスタントパブリッシング、Microsoft SQL ServerおよびOracleデータベースのインスタントリカバリにも対応し、即時の復元機能を強化している。なお、こちらの提供時期は今のところ未定となっている。
シンプルな操作と日本のユーザーが求める信頼性を提供する
Veeam SoftwareのアランCTOは、今回のイベントで発表した新製品について、COVID-19によって大きな影響を受けたと説明した。
「例えば『Veeam Backup for Microsoft Office 365 v5』では、Microsoft Teamsからのデータを保護する機能とリカバリ機能を追加した。COVID-19が世界で起こって以降、私たちはMicrosoft Teamsのようなコラボレーションツールを使い、多数のコラボレーションを行っている。組織がTeamsで生成している知的財産の量は膨大であり、将来の成功に影響を与えることになる。われわれはコラボレーションやコミュニケーションツールが生成するデータを適切に管理していくことを支援するために、差別化された効率的な方法を提供している」(アランCTO)。
COVID-19はこれまで滞っていた企業のDXを一気に加速させたとされている。それは日本でも、日本よりもDXが進展しているとされてきた米国でも、同様だったようだ。
「COVID-19の影響で2種類のデジタルトランスフォーメーション(DX)が大きく進化することとなった。リモート環境で仕事をする際、以前とは明らかに異なる方法が採られるようになった」とアランCTOは話す。
また数週間前、あるユーザーと話したところ、「昔はテープをある場所から別の場所に移動させていたが、今ではオフィスに行くことはない。現在はパブリッククラウドにデータを取り込んでいるので、リモートで仕事をしながら組織を成功に導くことができるようになった」と言われたそうだ。
さらに別な側面としては、生活にかかわるさまざまな事象のデジタル化がさらに加速していくことを挙げた。
「私の生活を例にすると、近隣のレストランは3カ月前から閉店している。店に行っても中に入ることはできない。そこで店舗が生き残りを賭けて始めたのがオンライン注文だ。デジタルサービスが作られ、私はこれを利用するようになった。このサービスが継続していくことを期待している。3、4年先には、レストランは私の注文履歴データを蓄積し、例えばそこに天候データと交通パターンを重ね合わせて、私に通知を送るようになるのではないか。『ダニー、今日はおすしを食べたいと思っているんじゃない?今日は気温が高くなりそうだし、道路も混雑しそうだから、家で食事ができるよう、送りましょうか?』なんていうセールスをしかけてくるかもしれない」。
こうしたサービスが普通の店舗でも行われるようになれば、「データは重要だ」と多くの企業が指摘している事実が、さらに広がりを見せる可能性がある。
「本来、レストランは私の注文履歴はデータとして持っていても、気象データ、交通データは持っているわけではない。ただし、データポータビリティを保ってさえいれば、新しい価値を生み出すことが可能となる。データポータビリティがあるデータは、気象データ、交通データを組み合わせ、分析して新しい提案を行うことができるようになるからだ。こうした未来を実現するために、COVID-19が沈静化した後でも、レストランがデジタル化するような試みは継続してほしいと考えている」(アランCTO)。
もちろん、街のレストランがデジタル化するようになれば、Veeam Software自身にも新しいビジネスが発生することになる。オンラインで行われた自社イベントVeeamONでアランCTOはデモを行い、データを守るだけでなく、データを活用するためのバックアップをアピールした。
「私の注文履歴が活用されることは望むものの、プライバシー、セキュリティといった配慮も必要だ。分析などに活用することは簡単にできるものでありながら、プライバシーとセキュリティを保つために、バージョン10ではデータを共有するためのデータ統合APIを導入した。今回のオンラインイベントではバージョン11を紹介したが、私の注文履歴をデータベース化し、それを瞬時に回転させて、その種の分析を行う人と共有するにはどうしたらいいかを披露した」という。
メガクラウド間を自由に行き来できるように
また、クラウドデータ管理での事業拡大策として、メガクラウドベンダーであるAWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)の3つの間を自由に行き来することができる環境を作るという。
「クラウドデータ管理のリーダーを目指すためには、AWS、Azure、GCPの3つすべてで、データを移行できるようにする必要がある。バージョン11では、これら3つのクラウドのいずれかにあるワークロードを復旧できるようにすると発表した。そして、これら3つのクラウドのすべてでワークロードを保護する必要がある。他社はどこもこれを実現していないからだ」(アランCTO)。
さらに、これ以外の分野への投資にも積極的に取り組むという。例えば、メガクラウドには含まれない、各国固有のニーズにも対応するとのことで、「昨年、日本にいたときに富士通と会議をした。3つのグローバルクラウドをサポートしているというだけでは不十分で、その地域のベンダーとシステムインテグレータによって作り上げた市場と、その歴史やインフラを理解している。これは日本だけの話ではなく、例えば欧州ではGDPRがいつも出てきて、それへの対応が必要になるように、世界のすべての地域が固有の違いを持っている。世界中の各地域へ投資するということだ。日本向けとしては、日本地域のローカルサポートを導入した」。
データ保護のためのソリューションを提供するソフトベンダーは多いが、Veeam Softwareは後発だったこともあって、当初は仮想化に最適なデータバックアップとアピールしてきた。しかし、2018年以降はクラウドのデータ保護を標ぼうしている。クラウドは新しい技術、SaaSなどのアプリケーションなど、利用者にとっては利便性が高いものの、データ保護ベンダーにとっては常に技術進化を続け、対応する必要がある点が課題だ。
「私たちには3つの大きな差別化要因がある。一つは、当社の製品のシンプルさだ。当社の製品はダウンロードしてインストールし、15分で稼働させることができる。本当にシンプルで、利用者が望むだけスケールアップできるのだ。先週、あるサービスプロバイダと話したが、そのサービスプロバイダは8万台の仮想マシンと物理マシンを保護している。これだけのマシンを保護していくために必要となるのは、シンプルに管理ができることだ」。
2つ目のポイントは柔軟性だという。「当社の提供している製品は柔軟性に富んでいる。例えばNetAppの45以上の異なるストレージシステムと統合し、意識せず使うことができる。富士通、Huaweiのストレージでも同様」。
そしてアランCTOは3つ目のポイントとして、信頼性の高さを挙げた「当社のデータフォーマットは完全なポータブルを実現している。オンプレミスのデータをクラウドに移動して、まったく異なる管理システムを持つことができる。これはメディアサーバーや中央制御サーバーを持つ、ほかのデータバックアップベンダーとは異なる特徴だ」とする。なお、この特徴は、今後競合との戦いが厳しくなったとしても重視していくとした。
「競合との戦いが激しくなってどこに注力するのか?それは当社のベースとなるビジョンに戻るということだ。当社のビジョンは、最も信頼されるバックアップソリューションのプロバイダーになること。もし当社の製品が動かない場合は、ほかのバックアップソリューションベンダーを探すべき。そういった事態が起こらないよう、全力で信頼性ある製品を開発していく。私たちは、あらゆる市場に向けたソリューションの信頼性を重視する。特に日本市場では、信頼性の高い製品を提供することが本当に重要だと信じている」。
"製品" - Google ニュース
June 23, 2020 at 04:00AM
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Veeam Software、自社イベントで4製品を発表 「COVID-19の影響で新製品の機能にも変化が」と米本社CTOが明かす - クラウド Watch
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