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新製品の的外れな口コミにメーカーはWeb直販で対抗する - ITmedia

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 周辺機器を売るメーカーにとって近年の最大の悩みは、ネットの口コミだといっても過言ではない。どんなに優れた製品でも、ひとたびネットで悪評が広まると、真偽が十分に検証されることなく製品の評価として定着し、製品寿命を絶たれてしまいかねない。

 もちろん、それらが事実に基づく評価であれば、諦めもつく。そもそもメーカー自身、製品の欠点に口をつぐんで売ってきた前科は幾らでもあるわけで、それが早いタイミングで可視化されるようになっただけならば、いうなれば自業自得である。

 また、故意に評判をおとしめようとする口コミも同様だ。これらの多くは個々の製品に対するものではなく、メーカーに対するアンチ的な行為だからだ。法的に対処すべき案件にはきちんと対応するとして、製品担当者が製品作りの段階で努力して回避できるものではない分、違った意味で諦めがつく。

 むしろ厄介なのは、十分な知識を持たないユーザーによる、的外れな口コミだ。「できると思っていた操作ができなかった」「機能そのものが搭載されていなかった」など、メーカー側からすると「え? できるなんて一言も記載してないんですけど?」と、びっくりするような理由によって、低い評価が付けられてしまう。災難以外の何物でもない。

 実はこれらは、至極簡単な方法によって回避できる。ズバリ、そうした勘違いをやらかしがちなユーザーにおかしな口コミを投稿させなければいいのだ。そしてそのために用いられるのが、前回も紹介した、メーカーによるネット直販ということになる。

 今回は、前回とは若干視点を変え、口コミをコントロールするための機能としてのメーカーのネット直販という手法と、これに付随する幾つかの手法をみていく。

販路をメーカー直販「だけ」にする利点

 メーカーによるネット直販が、口コミのコントロールに効果的な理由は幾つもある。例えば、そのメーカーに対してアンチな立場を取るユーザーを排除できることもその一つだ。たとえアンチであっても、わざわざメーカーサイトに個人情報を登録してまで難癖をつけようというユーザーはまれだからだ。

 また、会員登録という手間をかけてまでメーカー直販サイトで製品を購入しようとするユーザーは、既にその段階で製品に関する前知識を備えていることが多いので、そうしたユーザーが率先して製品を手に取り、その魅力をあちこちで布教してくれるのは、メーカーにとって願ったりかなったりだ。欠点の指摘であっても、そうしたユーザーを通せば、表現はより穏やかになることが期待される。

 とはいえこれだけでは、知識不足や早とちりなユーザーが、レビュー機能を持った外部のECサイト、例えばAmazon.co.jpなどでトンデモな評価を書き連ね、それが星幾つというスコアに変換されて、製品の評価として定着することを回避できない。それでは意味がない。

 こうした場合に有効なのが、販路をメーカー直販「だけ」にしてしまう方法だ。こうすれば、外部のECサイトで低評価のレビューを書こうにも、そのECサイト上に該当製品のページが存在しないため、書きようがなくなる。

 もちろん別の場所、具体的にはSNSなどで暴発する可能性はなくはないが、それならばメーカーのSNSアカウントを介して直接コンタクトを取り、手取り足取りしつつ勘違いを正すこともできる。結果として、知識不足や勘違いでつけられた低評価が、誰にも訂正されずに製品そのものの評価として定着するという、製品担当者にとっての最悪の事態は回避できる。

 またこれ以外に、メーカー直販サイト上に、レビュー機能を用意しておく方法もある。自社サイトに投稿された口コミであれば、公開の権限はメーカー側にあるので、内容によっては非公開にすることもできる。露骨にやりすぎると反感を買いかねないが、手厚いサポートの一環として(いい方を変えるとガス抜きとして)極めて有効だ。

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肯定評価を定着させるのに有効な「アンバサダー制度」

 もっとも、過剰に口コミを抑え込むと、今度は製品の評価が定まらず、どこかで影響力のあるレビューが出てくる度に、評価が極端に上がったり下がったりという問題が発生する。これに対する効果的な抑止策が、近年よく耳にするようになった「アンバサダー制度」だ。

 アンバサダー、つまり自分たちの息がかかったユーザーを応援団として起用し、彼らによる好意的な評価が製品に興味を持ったユーザーの目にとまりやすくなるよう、製品ページからリンクを張るなどして露出を行う。そうすれば、物量をもって、よい評価を定着させられる。また同時に、好ましくない評価を相対的に目立たなくする効果もある。

 また、アンバサダー制度のもう一つの大きなメリットとして、これからレビューを投稿しようとしているユーザーの意見を、肯定的な方向に導きやすいことが挙げられる。口コミを書こうとするユーザーは、常に自身のオリジナルの意見を書くわけではなく、既存の評価を参考にすることが多い。「うっかり的外れなことを書いて恥をかかないよう、既出の口コミを確認しておこう」というわけだ。

 そこでアンバサダーによる肯定的な口コミを目にすると、よほど発信しなければ気がすまないクリティカルな問題点でもない限り、それらに影響されて、全体的に肯定的なトーンへと塗り替えられる。結果、メーカーにとっては好ましい、無害な口コミが出来上がるというわけである。

 余談だが、こうした手法はアンバサダー以外にも存在する。例えば、なぜか新製品が店頭に並ぶ前に公開される識者によるレビューなども、同様の効果を狙ったものと考えてよい。そこで肯定的な評価が出回れば、後続の口コミのトーンにも影響を与えるし、たとえネガティブなレビューが出たとしても、数の論理で影響を最小限に抑えられる。

いかにも日本的なやり方

 前回紹介したように、販路をネット直販のみに絞る方法にはメリットもあればデメリットもあるが、こと口コミのコントロールという点にフォーカスすれば、明らかに有利な面が多い。特に、過去に口コミ絡みで痛い目に遭った経験のあるメーカーは、こうした方法を選択しがちだ。

 さらに、以前紹介した、特定のECサイト限定の型番を付けて売る方法を組み合わせれば、万一ネットで悪い評価が付いても、別の製品であるかのように振る舞うことが可能になる。少なくとも、元の型番で検索してきたユーザーが、その悪評に到達することはない。

 こうしたやり方に眉をひそめる人もいるかもしれないが、多くの国内のメーカーは、一部の海外メーカーがAmazon上でさかんに行っているといわれる、ヤラセレビューや悪い口コミの削除、製品の提供といった直接的な方法には極めて及び腰だ。発覚すれば、メーカーの存続を脅かしかねないからだ。

 そうした背景もあって、今回紹介したような、表からはなるべく目立たない形で、口コミを自社寄りに持ってくるコントロール・テクニックが発達したと考えれば、いかに日本的なやり方として、その印象も変わってくるのではないだろうか。

著者:牧ノブユキ(Nobuyuki Maki)

IT機器メーカー、販売店勤務を経てコンサルへ。Googleトレンドを眺めていると1日が終わるのがもっぱらの悩み。無類のチョコミント好き。HPはこちら


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