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『PCエンジン mini』レビュー:懐かしさとともに自分の半生と向かい合う時間をくれるハード - めるも

自分はどんなゲーマーなのか? ひいては自分はどんな人間なのか? 懐かしさとともにそんな問いに向かい合わせてくれるのが、『PCエンジン mini』というハードだ。

ミニ・レトロハード最後の砦『PCエンジン mini』がとうとう発売!

『PCエンジン mini』は、1987年に販売開始された8Bitゲーム機『PCエンジン』のゲームが58本も詰まったミニ・ゲームハード。2016年発売の『ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ』に始まり、『ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン』、『メガドライブミニ』、『NEOGEO mini』、『PlayStation Classic』……と、名だたるレトロハードがミニハードとしてリリースされる中、最後の砦となっていた『PCエンジン mini』がとうとう発売された。

『PCエンジン』はハドソンとNECによって共同開発されたハード。「コア構想」というコンセプトに基づいて開発されており、本体をコアにした拡張ができるというのがハードウェア的な特徴だ。このコンセプトを最も端的に表したハードが『CD-ROM2』。『PCエンジン』にCD-ROMドライブを追加することで、CD-ROMの大容量を活かしたゲームがプレイ可能になるという拡張機能だ。

『PCエンジン』の特徴について書いてみたが、『PCエンジン mini』の情報に興味を持つ人の多くは、過去に『PCエンジン』を遊んだことがあって、ノスタルジーを持っている人のはず。そこでこの記事では、『PCエンジン mini』に収録されている全ソフトについて表面上の話をするのではなく、筆者の思い入れによって9本のソフトをピックアップして、当時の状況に触れながら『PCエンジン mini』について紹介したい。なお、『PCエンジン mini』はスクリーンショット機能を持っていないため、画像はすべてモニターを直撮りしている。このため、若干のノイズが入っていることを予めご了承されたし。

「コア構想」へのオマージュ? 背面スロットを開けて接続

まず筆者がグッと来たのは、『PCエンジン mini』の背面スロット。先に触れた通り、『PCエンジン』は「コア構想」に基づいて作られており、本体をコアにした拡張ができるようになっている。この拡張用に使われていたのが『PCエンジン』背面部にあるスロットで、オレンジ色のカバーを外して関連機器と接続していた。『PCエンジン mini』にもこのスロットが用意されており、カバーを外すことができる。そこにあるのは、モニター接続用のHDMI端子と電源供給用のUSB端子だ。

デカキャラ! 超カラフル! 「ファミコンではできない」が詰まったゲーム達

続いてはソフトについて触れたい。トップバッターは『THE 功夫』! といっても実は筆者、『THE 功夫』をプレイしたことがない。しかし、思い入れはたっぷりある。どんな思い入れがあるかといえば、『PCエンジン』発売時、デパートの玩具売り場でディスプレイされた『THE 功夫』のインパクト! 当時のゲームキッズがメインゲーム機だったファミコンと比べて明らかにデカいキャラ! さらに色数が豊富でカラフル! デパートの玩具売り場で眺めながら「あれが家で遊べたら……!」と願った日々は心に強く焼き付いている。

デカキャラや色数も含めて、『PCエンジン』初期には「こんなのファミコンではできない……!」を実現したタイトルに思い入れが強い。それをスペック面ではなく企画面で実感させてくれたのが『邪聖剣ネクロマンサー』だろう。『PCエンジン』初のRPGである本作は、ファミコンで主流となっていた「ドラクエ」テイストのRPGとは一線を画している。何しろパッケージは映画『エイリアン』のH・R・ギーガー。作品内のビジュアルもギーガーに大きく影響を受けたホラーテイスト。最初の街を出てまず出会う敵が、内臓飛び出たモンスター(クリーパー)。当時小学校高学年で、そろそろませてきていた筆者にとっては、「子ども向けのファミコンRPGとは違うぜ……!」と思わせるに十分だった。

当時、小学生だった筆者にとって、「どんなタイトルを買うか?」によって友だちとの関係上も重要だった。イケてるゲームを買ったら、ゲームソフトを交換する時も有利だし、しばらくは友だちの中で存在感も発揮できる。大人になった今から思うとくだらないことだが、小学生にとっては重要だった。そういう意味で筆者がインパクトを受けたタイトルが『加トちゃんケンちゃん』。これは当時放映されていたテレビ番組『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』(TBS系)の内容をアクションゲーム化した作品。人気番組のゲーム化という意味でも、アクションゲームとして出来がいいという意味でも、友人受けがバツグンだったのを覚えている。ただ本作は、残念ながらストレートにそのまま『PCエンジン mini』に収録されているわけではない。収録されているのは海外タイトルの『J.J. & Jeff』だ。権利上仕方ないのだろうけど、ちょっと残念。

そして、筆者の周囲で「ファミコンとは違う!PCエンジンすげえ!」を決定的にしたのが『R-TYPE』だ。おそらくこの記事をご覧の方の周囲でも、『R-TYPE』のインパクトは強かったのではないだろうか。アーケードゲーム『R-TYPE』は、無敵装備フォースを使った戦略的なゲーム内容はもちろんのこと、ビジュアル面での迫力にも優れた作品だ。特にステージ3のボス・巨大戦艦は、一画面に収まらない巨大さ。そもそもアーケードゲームとしてインパクトが大きなタイトル。そんな作品を前後編に分けて発売するという特殊な形ではあったが、完全再現したのがPCエンジン版『R-TYPE』だった。

アーケードの再現度がスゴイ! シューティングが面白い

『R-TYPE』のインパクトによって、筆者の周囲にはアーケードゲームを劣化なく遊ぶなら『PCエンジン』という認識ができつつあった。さらに、中学生になって周囲に「ゲームを遊ぶならアーケードゲーム」的な認識も生まれてきたので、ますます『PCエンジン』の存在感は増していったように思う。そんな時期を代表するタイトルのひとつが『スプラッターハウス』だ。アーケードゲーム『スプラッターハウス』の移植作。映画『13日の金曜日』のジェイソン似の主人公が、グロテスクな化け物と戦いながら恋人奪還を目指す横スクロールアクション。一応ファミコンにも移植されているのだが、子ども向けにデフォルメされた『スプラッターハウス わんぱくグラフィティ』という別作品になっている。このため、『PCエンジン』向けにストレートに移植された時のインパクトは強かった。

さらに『スプラッターハウス』以上のインパクトを与えたのが『源平討魔伝』。筆者の周囲ではアーケード版『源平討魔伝』の評価は別格だった。ステージによって見下ろし型アクション、横スクロールジャンプアクション、巨大キャラによる剣撃アクション……と大きく変わるゲーム性。さらに、人形浄瑠璃『出世景清』を原作とした圧倒的な世界観。『源平討魔伝』はファミコンに移植される際、ジャンルをボードゲームというまったく別ジャンルに変えて移植されることになった。その時も周囲の反応は、「さすがに『源平討魔伝』をファミコンには移植できないだろ」というものだったように思う。そんな『源平討魔伝』がPCエンジンでほぼ忠実に移植されたのだから、相当なインパクトだった。筆者の人生においても思い入れの深い作品だ。

『ストリートファイターII』によって格ゲーブームが起きる前、アーケードの花形と言ったらシューティングゲームだった。なので、アーケードの移植タイトルに強い『PCエンジン』には、当然のごとくシューティングゲームが多い。しかし、『PCエンジン』のシューティングはアーケードの移植版だから面白いのではなく、オリジナルタイトルでも面白いものが多かった。そんな中で筆者の思い入れが強いのは『ガンヘッド』。『ガンヘッド』は、ロボットものの特撮映画『ガンヘッド』を原作としたゲーム……なのだけど、ぶっちゃけ原作とゲームはほとんど関係がない。本作はゲームメーカーのコンパイルが制作した縦スクロールシューティングゲーム。

コンパイルは、後に『ぷよぷよ』を生み出すことになるが、『ザナック』や『アレスタ』シリーズといった良作シューティングで知られるゲームメーカーでもある。当時筆者は『MSX2+』というPCを持っており、『アレスタ』シリーズが大好きだったので、本作の思い入れが強い。ちなみに本作も『J.J. & Jeff』同様、『Blazing Lazers』という海外版が収録されている。

CD-ROMが魅せた! 映像演出の魅力

『PCエンジン』にはシューティングの良作が多い。それは間違いない。ただその一方で、家庭用機向けのジャンルで一般的に普及していったゲームジャンルは、RPGだ。そしてRPGにおいて『PCエンジン』が発揮できた強みが『CD-ROM2』。当時の日本のRPGは「物語を映画的に魅せる」という方向へ進化をはじめていた。その手法は、キャラクターの顔画像を表示したり、キャラクターを自動的に動かして演技させたり、アニメムービーを流したり……といったもの。こうした演出に適していたのが『CD-ROM2』だ。ちなみに『PCエンジン mini』で『CD-ROM2』のタイトルを起動すると、『CD-ROM2』挿入画面と起動画面が表示され、CD-ROMを読み込む音が聴こえてくる。この演出で、思い切り当時の自分を思い出してしまった。

『CD-ROM2』のタイトルで思い入れが強いのは、『イースI・II』や『天外魔境II 卍MARU』……と言いたいところだが、筆者的には『悪魔城ドラキュラX 血の輪廻』を推したい。本作は『悪魔城ドラキュラ』シリーズの一作で、横スクロールアクション。当然RPGではない。RPGではないのだが、『CD-ROM2』のタイトルの特徴であるムービーや、キャラクターの演技といったゲーム演出を効果的に取り入れており、作品への没入感はRPGと比べてなんら遜色ない。余談だが、本作の直接的な続編である『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』がスマホ向けにリリースされているので、併せてプレイするとより楽しめるだろう。

『CD-ROM2』のメリットをBGM方面に活かしたという意味で思い入れが強いのは『超兄貴』。ゲームシステム的にはスタンダードな横スクロールシューティングで世界観が独特だ。プロテイン採掘プラントを乱立させ侵攻を繰り返す「ボ帝ビル」を倒すという設定。自機にオプションとして従う2人のマッチョマン・アドンとサムソンなど、筋肉美を世界観としているのだ。この世界観をパーフェクトなまでに引き立て、魅力的なものにしているのがBGM。本作のサウンドトラックはゲーム史に残るものだと思う。本作のBGMを聴くために『PCエンジン mini』を買ったとしても惜しくない! 筆者にとってはそれぐらいのタイトルなのだ。

最後に最も思い入れの強いタイトルが『SNATCHER』。本作は、筆者がゲーム業界を目指すきっかけになったタイトルだ。『メタルギアソリッド』シリーズや『デス・ストランディング』の小島秀夫監督作品。人を殺し、殺した人間とすり替わる(=スナッチ)謎のアンドロイドを追うアドベンチャーゲーム。監督作品の特徴であるSF要素や映画的な映像演出は本作の時点からすでに存在している。『CD-ROM2』の大容量が使えるとはいえ、ドット絵による映像演出の数々は、今プレイすると逆に新鮮な印象を受けるだろう。本作は『PC8801』向けに発売されたオリジナル版がストーリー途中までの未完結状態だった。その後、『SDスナッチャー』という完結まで描いた作品がリリースされたものの、こちらは小島監督企画ではない上、ジャンルがRPG。そうした経緯を経て、「完結まで描いた小島監督企画のアドベンチャーゲーム」としてリリースされた初作品がこの『PCエンジン』版。筆者は当時、オリジナル版『スナッチャー』からのファンだったため、それはそれは思い入れが強いのだ。

半生を振り返り「自分」を再認識できるハード

正直なところ、『PCエンジン mini』のみならず、ミニ・レトロハードというのは、それぞれのタイトルを数分プレイして終わり……という人がほとんどだと思う。どんなに名作タイトルとはいえ、レトロゲームを今プレイすると、ストレートに面白いとは思えない。がんばってはいてもビジュアルにはショボさを感じるし、操作性が悪いと感じる部分もある。だからこそ、ぜひとも当時のことを思い出しながらプレイして欲しい。「当時自分がどうしてこのゲームを買ったんだっけ?」あるいは「あきらめたんだっけ?」と。それは、ただ昔を懐かしむだけの行為じゃない。自分の半生を振り返って自分の好みを確認し「そういや自分ってこんな人間だったよな」と、「自分」を再認識する行為に繋がる。改めて自分と向かい合う時間は、きっと今のあなたのプラスになってくれるはずだ。

文/田中一広

PCエンジン mini – Konami 公式サイト:

https://ift.tt/2Un9hpe [リンク]

(執筆者: ガジェット通信ゲーム班)

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