岩だらけの小惑星リュウグウに2度にわたり着陸成功するなど、大きな成果をあげた探査機「はやぶさ2」が今年、いよいよ地球に戻ってくる。連載「的川博士の銀河教室」でおなじみのJAXA名誉教授・的川泰宣さん(77)に地球帰還の見どころを聞いた。
はやぶさ2は現在、地球に向けて8億キロの旅路を航行中だ。12月ごろに地球に近づき、オーストラリア南部の砂漠にリュウグウで採取した物質の入ったカプセルを落とす。
この砂漠は2010年6月、「初代はやぶさ」もカプセルを落下させた場所だ。はやぶさの機体はこの時、大気圏で燃え尽きてしまった。当時、神奈川県相模原市のJAXA管制室で様子を見守っていた的川さんは「何度もピンチを乗り越えて地球に戻ってきたはやぶさとの別れは悲しく、管制室は重い雰囲気だった」と振り返る。
緊張の「カプセル分離」
今回、はやぶさ2の機体は大気圏には突入せず、切り離されたカプセルだけが、スピンしながら秒速12キロで突入する予定。的川さんによると、カプセルの切り離しは、大変な山場になるという。
カプセルが大気圏に突入するとき、周囲の大気はなんと1万度以上になる。「どのタイミングで切り離すか、切り離されたカプセルが姿勢を保てるか、パラシュートはきちんと開くのかなど緊張が続く展開になる」と的川さん。特に、耐熱材のある面を大気に向けられるか、カプセルの姿勢がポイントになるという。
リュウグウは太陽系誕生の46億年前に近い状態を保っていると考えられており、JAXAはカプセル内の岩石を分析し、地球の海や生命の起源を探る手がかりにしたい考えだ。はやぶさ2が運んできた「リュウグウからの玉手箱」が大気の壁を突破して無事に地上まで届くのか。年末まで、はやぶさ2のニュースで盛り上がりそうだ。
■KEY WORDS
【的川泰宣さん(77)】
1942年広島県呉市生まれ。日本初の人工衛星「おおすみ」打ち上げやハレー彗星探査など、誕生したばかりの日本の宇宙開発の現場で活躍。毎日小学生新聞で2008年10月から「的川博士の銀河教室」を好評連載中。11年10月公開の映画「はやぶさ/HAYABUSA」では的川さんをモデルにした役を俳優の西田敏行さんが演じた。
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