｢十分な能力があれば十分だ｣。GPTより手頃で安価なモデルを追求し始めたAI企業たち - Business Insider Japan

｢ChatGPTやClaudeのようなチャットボットを作る企業は、一般的な知識を与えたり、第二次世界大戦について聞いたり、2020年の選挙で誰が勝ったかを聞いたりします。我々はそのようなビジネスをやるつもりはありません｣（ゴドシ）

データブリックスは、より小型で手頃な価格のモデルを作ろうとする多くの企業のひとつに過ぎない。

2024年5月14日に開催されたGoogle I/Oの年次イベントで、同社は｢もっと速く費用対効果が高い｣といわれるGemini 1.5 Flashを発表した。Gemini 1.5 Proは100万トークンあたり7ドル（約1094円）だったが、この新しいモデルは100万トークンあたりわずか35セント（約54円）である。

一方、マイクロソフト（Microsoft）とアップル（Apple）は最近、さらに小型で安価なモデルを発表し、いつか携帯電話上だけで動く生成AI製品を目指している。通常、最先端の研究で差別化を図っているOpenAIでさえ、5月中旬に｢さらに速く、50パーセント価格の低い｣GPT-4の新バージョンを発表した。

AI競争の初期には、誰が最も強力なモデルを作り、最も多くのパラメーターを持ち、最も大きなコンテキストのウィンドウを持ち、最も印象的なデモ動画を作ることができるかを競っていた。しかし、最先端の技術が実際に優れたビジネスモデルであるかどうかはまだわからない。

結局のところ、生成AIを導入しているほとんどの大企業は、必ずしも人間のようなAGI（人間のような汎用的な知能を持つ人工知能）が我々を次の意識ステージに連れていってくれることを期待しているわけではない。

現在、多くのAI開発者は、レーザーディスクよりもかつてのVHSになりたいと考えているようだ。理論的研究の最先端ではないかもしれないが、魅力的な価格で本来の実用性を提供し、その過程で大きな利益を得ようとしている。

新しいAIモデルを訓練しているあるシード段階のスタートアップの創業者兼CEOはこう語った。

｢一般的なコンセンサスとしては、これらのモデルをもっと大きくし、より多くのデータで訓練すれば、どんどん良くなっていくと思いますが、それは終わりのない話ですよね？企業としてはこれで十分だということが重要なのです｣

AIモデルが大きくなり、より多くの資金とコンピューティングリソースがかかるようになると、パフォーマンスという点ではリターンが落ちることがよくある。モルガン・スタンレー（Morgan Stanley）のリサーチャーは最近、GPT-5がGPT-4の5倍〜10倍の大きさになった場合、トレーニングに費やされる処理能力は25倍〜100倍になるだろうと試算した。

かつても、そして将来もOpenAIの競合となるであろうコーヒア（Cohere）社は、｢ビジネスにとっての重要な機能｣で、GPT-4 Turboの安価な代替品となる、とプレスリリースで説明されているCommand-Rを最近発表した。

これは、マーティン・コンCOOが｢スケーラブル・モデルの新しいカテゴリー｣と呼ぶもので、同社の最新製品である。彼によると、コーヒアはAI機能を大規模に展開しようとしている企業に焦点を絞っているという。そのような世界では最先端技術を持つことよりも、手頃な価格と信頼性が重要だと彼は言う。

｢私たちはモーターショーのためのプロトタイプにフォーカスするのではなく、量産モデルに焦点を当てるのです｣（コン）

とはいえ、GPT-5の発表が間近に迫っているという、1000億ドル級の共通の難題がある。OpenAIは今後数カ月のうちにその新モデルを発表する予定であり、いずれにせよ、それが今後のAIの方向性を決定づけることになるだろう。おそらく既存のモデルよりもはるかに高度なものになる、というのが大方の意見だが、AI革命を引き起こしたChatGPTのような時代の潮流を爆発させるような印象的な発表になるかどうかは未知数だ。もしそうならなければ、｢十分な能力があれば十分だ｣という主張がさらに正当性を持つことになるかもしれない。

2024年2月28日、Business Insiderの親会社であるアクセル・シュプリンガーは、他の31のメディアグループとともに、グーグルの広告慣行によって損害を被ったとして、オランダの裁判所に23億ドル（約3590億円）の訴訟を起こした。

Business Insiderの親会社であるAxel Springerは、OpenAIに自社のメディアブランドの報道でモデルを訓練させるグローバル契約を結んでいる。