NVIDIAは9月1日(現地時間)に、同社CEOのジェンスン・フアン氏の講演をデジタルで公開し、同社のゲーミング向けGPUの最新製品となるGeForce RTX 30シリーズを発表した。
その後行なわれたより詳細を説明する説明会では、8Kへの対応状況などが説明されたほか、NVIDIAがGeForce RTX 30シリーズと同事に発表したゲームのレイテンシ(遅延)を削減する新しい機能となるNVIDIA Reflex(リフレックス)の詳細を明らかにした。NVIDIAはこれまでNVIDIA Ultra Low Latencyというレイテンシ削減機能を提供してきたが、それをNVIDIA Reflexに置き換え、NVIDIA Ultra Low Latencyよりも大きくレイテンシを削減することができる。
レイテンシとは、ゲーマーが何らかの入力(例えばマウスを動かす、ゲームパッドのボタンを押す)という操作を行なってから、それが画面上に反映されるまでの時間のこと。このレイテンシが大きければ大きいほど、ユーザーの感覚とのズレが大きくなり、思うように操作することができないだけでなく、対戦時などに相手のレイテンシよりも自分のレイテンシの方が大きければ、先に自分が発見されて競り負ける、そういうことも十分に考えられる。
このNVIDIA ReflexはGeForce GTX 750世代以降のGeForceに対応し、GeForce RTX 30のリリースに合わせて提供されるドライバーに含まれる。ゲームタイトル側の対応も必要になるため、今後徐々に利用することが可能になる見込み。
マウスを押してから画面上で弾が発射されるまでの時間、それがレイテンシ
NVIDIAが記者説明会で説明したのは、NVIDIAが今回発表したGeForce RTX 30シリーズ、そして1つ前の世代になるGeForce RTX 20シリーズ、そして2つ前の世代になるGeForce GTX 10シリーズなど、過去の世代(Maxwell世代=GeForce GTX 750以降に対応)も含めて対応したシステムレイテンシ削減技術の「NVIDIA Reflex」だ。
NVIDIA Reflexの説明に入る前に、まず「レイテンシ」とは何かということを説明しておこう。レイテンシとは日本語では遅延を意味する英語で、何かを指示してから実際にそれが実行されるまでの「遅れる時間」のことを意味している。ITの世界では、ハードウェアに対してソフトウェアが何らかの演算なりを行なうように指示を出してから、実際に実行されるまでの時間をレイテンシ(遅延)と言っており、ナノ秒(10億分の1秒)などの単位で示されることが多い。
それに対してゲームでのレイテンシというのは、ゲーマーがプレイしているゲームでゲーマーの指示がPCの画面に反映されるまでの時間となる。例えば、ゲーマーがゲーム内のキャラクターに銃を撃たせるために、マウスの右ボタンを押したとする。そうすると、そのマウスの信号はUSBケーブルを経由してCPUやGPUに届き銃を撃つことをゲーム内のキャラクターにさせる。そのユーザーがマウスを押してから、実際に画面上で銃の弾が発射されるまでには10ミリ秒(1/100秒)から長ければ100ミリ秒(1/10秒)強程度の時間がかかっているのだ。こうしたPC全体での遅延を「システムレイテンシ」(システム遅延)と呼んでいる。
例えば、上記の画面では、敵のプレイヤーが180ミリ秒(=0.18秒)間で扉から扉の間に姿を現わして移動している。この時に敵のプレイヤーに弾を当てるには、人間の応答速度(目で見てからマウスを押すまでの時間)とレイテンシの合計が180秒以下でないと、弾を発射した時には既に相手は見えなくなっているということになる。一般的なゲーマーでは応答速度が150ミリ秒程度、反射神経がよいeスポーツプレイヤーでは120ミリ秒程度だという。レイテンシが45ミリ秒であれば、一般的なゲーマーの応答速度150ミリ秒+45ミリ秒=195ミリ秒となるため、実際に発砲された時にはもう敵はいないということになる。しかし、そのレイテンシが12ミリ秒であればeスポーツプレイヤーなら120ミリ秒+12ミリ秒=132ミリ秒となり、180ミリ秒を下回るので、当てられるかは本人の腕次第だが、少なくとも開いているドアの隙間に弾をたたき込むことができる。
また、そうした銃を発射するときには、レイテンシが大きいと、照準と実際に発射される時のズレが大きくなり、目標に当てにくくなる。しかし、レイテンシが小さければ小さいほど、照準と実際に発射されるズレが小さくなるので、射撃精度がより上がることになる。
CPUがGPUに画面を描画しろと命令する間の待機時間を削減するReflex、ただしタイトル側の対応が必要
NVIDIAによれば、ユーザーがデバイスを操作してからディスプレイにそれが表示されるまでのレイテンシのうち、最も大きな割合を占めているのは、CPUがGPUにこの画面を描画しろと命令してGPUが画面を表示するまでの待機時間(英語ではレンダーキューと呼ぶ)だという。この部分の遅延を最小限にすることで、レイテンシを削減することができる、それがNVIDIA Reflexの基本的な考え方になる。
ではどうやって削減するのかというと、NVIDIAはゲームパブリッシャー(EAなどのゲームタイトルを開発したり販売する企業のこと)に対して「NVIDIA Reflex SDK」というSDK(ソフトウェア開発キット)を提供する。このSDKを利用してソフトウェアを開発し、NVIDIA Reflexに対応させることで、ゲームはそのレンダーキューを取り除くことができる。これにより、CPUとGPUが待機している時間が減ることになり、トータルでのレイテンシを削減することができるようになるのだ。
実はNVIDIAは「NVIDIA Ultra Low Latency」と呼ばれる機能を既に導入してきたが、NVIDIAによれば今回のNVIDIA Reflexはその改良版ではないという。最大の違いはゲーム開発者に対してSDKが配布されて対応が促されていることで、その結果としてNVIDIA Ultra Low Latencyよりも削減の割合は遙かに大きいという。ただし、逆に言えば、ゲームタイトル側がNVIDIA Reflexに対応していなければ効果は無いということはできる。
NVIDIAによればAAAタイトルでは「Apex Legends」、「Call of Duty Warzone」、「Call of Duty Black Ops Cold War」、「Call of Duty Modern Warfare」、「Destiny 2」、「Fotnite」、「Kovaak 2.0」、「VALORANT」などが既に対応ないしは今後対応する計画だと説明している。
NVIDIA Reflex Latency Analyzer対応モニターを使うとレイテンシを計測できる
さらに、今回NVIDIAは「NVIDIA Reflex Latency Analyzer」を導入することを明らかにした。NVIDIA Reflex Latency Analyzerは、簡単に言ってしまえばレイテンシを計測する為のハードウェアで、新しい360HzのG-SYNCディスプレイなどに組み込まれて出荷される。従来は1秒間に1000フレームを撮影できるような超高性能カメラを利用して撮影して測ったりしていたのだが、もちろん一般のゲーマーがそれを買うのは不可能に近い。
そこでディスプレイにマウスを接続する計測専用のUSB端子を用意し、ユーザーがマウスを押してUSBの信号がディスプレイに届いた時間からディスプレイに描画されるまでの時間を、ディスプレイに内蔵されている分析用のボードが測定する仕組みになっている。そしてその結果は、GeForce Experienceの一部として提供されている「GeForce Experience Performance Tool」の、ゲーム上にオーバーレイしてフレームレートや遅延を表示する「Performance Overlay」上に数値として表示されるので、ゲーマー自身が自分のPCのレイテンシがどの程度なのかなどをチェックすることが可能になる。それによって、CPUやGPUを買い換えるとかを参考にすることができるし、もちろんReflexによる効果を測定することもできる。
NVIDIA Reflex Latency Analyzerを内蔵したモニターは今後発売される計画で、ASUS ROG Swift 360Hz(PG259QNR)、Acer Predator X25、MSI Oculux NXG253R、Alienware 25 Gaming Monitor(AW2521H)などの360Hzに対応したG-SYNCモニターとなる。奨励マウスも同事に発表されているが、決してこのマウスでないと測定できないということはなくて、基本的にはUSBで接続するマウスであれば対応可能だ。
なお、このNVIDIA ReflexがあるからといってeSports大会などで、ライバルよりも優位に立てるかと言えば、おそらくそれはそうではない。というのも、そうした大会ではレギュレーションが決められており、これはオンで、これはオフでなどは大会のルール次第だ。このReflexも有効にしていいかどうかはそうしたレギュレーション次第なので、必ず優位とは言えないだろう。ただ、ローカルネットワークなどで友人とプレイするなどの場合には優位に立てる可能性はある。むろんライバルもGeForceを使っていて、相手もオンにしていれば話は別だが……。
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