9月という時期は、特に北半球において特別な意味をもつ季節だ。それは学校の新年度が始まる時期であり、季節の変わり目であり、秋分の季節でもある。
わたしたちは子どものころからこうした周期に波長を合わせて生活しているが、大人になったある時点でほかのさまざまな物事が脳内を埋め尽くし、そのようなリズムはかき消されてしまう。ただし、あなたがテック業界で働いているか、テック系の記事を読むのが好きなか、テック系の記事を書く仕事をしているなら話は別だ。このどれかに当てはまる人なら、9月はテック系イヴェント、アップルのイヴェントの季節である。
過去10年以上にわたり、アップルは9月に「スペシャルイヴェント」を開催してきた。新たな始まりの季節という雰囲気を生かし、重要なホリデーのショッピングシーズンに先立って新製品を巧みに発表してきたのだ。
主役の座をさらっていく製品は、いつも「iPhone」であることがお決まりだった。年を経るごとに、腕時計、ヘッドフォン、タブレット、スマートスピーカーと、発表される製品のカテゴリーは増えている。だが、いまだにiPhoneといえば9月であり、9月といえばiPhoneなのである。
パンデミック下の「one more thing」
それが今年は違う、と改めてお伝えする必要はおそらくないだろう。そこには、これまでのような予測可能な周期はない。わたしたちが手探りで新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)と向き合っている間にも数百万人が経済的に困窮し、アップルのおひざ元である米国西部は山火事によって文字通り燃えている。
すでにアップルの幹部らは、今年のiPhoneの発表は数週間遅れて10月にずれ込むと通告している。最新の収支報告でシェアされたこの情報は、驚くようなことでもないとともに、悪い意味で象徴的でもある。まさにパンデミックの時代における「one more thing(それと、もうひとつ)」なのだ。
それでもアップルは、9月15日(米国時間、日本時間9月16日午前2時)にイヴェントを開催する。このイヴェントはヴァーチャル形式で、生中継される。わたしたちが経験した「Zoom」や「WebEx」、「Teams」を使ったオンライン会議と似たようなものだ。
今回のイヴェントの主役が新型のiPhoneになることはおそらくないが、アップルがほかの多くのことに気をとられがちなわたしたちに注目してほしいと考えている製品は、ほかにも複数ある。
主役は新型Apple WatchとiPad
今回アップルから送られたデジタルの招待状には、「Time Flies(光陰矢のごとし)」という言葉が書かれていた。これは明らかに、腕時計を想起させることを意図したものだろう。ブルームバーグも複数の新型「Apple Watch」が準備中であることを報じている。
そう、複数なのだ。ひとつは何らかの新しいテクノロジーを搭載したApple Watchの最高級モデル、そしてもうひとつは「Apple Watch Series 3」にとって代わる低価格モデルだと予想される。
Apple Watchは比較的短期間で世界で最も売れている腕時計のひとつになっており、アップルの売り文句である「すべてのガジェットが一体となってシームレスに機能する」という点において、重要な役割を担っている。だが、Apple Watchはヘルストラッカーとしても人気であり、今年の最高級モデルには血中酸素濃度センサーが搭載されるのではないかという噂も流れている。
新型「iPad」のほうも、より「iPad Pro」のデザインに近い次世代「iPad Air」の発表があると予想されている。アップルのアナリストとして有名な郭明錤(ミンチー・クオ)は、2020年後半に何らかの10.8インチiPadが、それから数カ月で新型「iPad mini」が発売されるのではないかと予想している。
ここで大きな疑問になるのが、実際のところアップルは、この新しい洗練されたiPad Airと11インチの「iPad Pro」をどのように差異化するのか、ということだろう。複数の報道によると、「Touch ID」に何らかの改良が加えられ、スクリーン内蔵型のタッチセンサーか、あるいはiPadの電源ボタンに内蔵されることになるのではないかと見られている(理想としては、新型iPadには横向きにしたときに中心にくるフロントカメラも搭載してほしい。これがあればヴィデオチャットがかなりやりやすくなるはずだ。しかし、これは単なる個人的な希望なので、何の根拠もない話である)。
「AirTags」やARMベースのMacも控える
例年通りであれば9月は、アップルが春に開催している開発者向けカンファレンス「WWDC」で発表した新たなソフトウェアの完成版が公開される時期でもある。現時点では、10月まで新型iPhoneの発売がない状況であることから、「iOS 14」の正式なリリース日は明らかになっていない。しかし、数百万人のユーザーが“古い”iPhoneのiOSを最新ヴァージョンにアップグレードすることになるので、アップルが例年通りにソフトウェアをリリースする可能性はある。
アップル情報サイト「MacRumors」によると、今後近いうちに何らかの発表があると見られるその他のハードウェアとして、忘れ物防止タグ「Tile」の競合になるポテンシャルをもつ「AirTags」や、価格を抑えた新型の「HomePod」が今秋中にも披露される可能性があるという。
さらにアップルは、今年すでにARMベースの「Mac Mini」を開発者キットとして公表しており(これはインテル製チップからの脱却を意味することから大きな意味がある)、発表時には年末までに量産モデルの出荷を開始する予定だと説明していた。現時点では、新しいARMベースのMacを体験できているのは開発者のみである。
サーヴィスを統合したサブスクも登場?
アップルのハードウェア発表イヴェントは、ハードウェアだけのものではない。それはアップルの未来へのヴィジョンを示すためのプラットフォームであり、画面や性能よりもサーヴィスが重要になる。
アップルの事業において、各種サーヴィスは最も高速で成長を遂げている分野のひとつだ。前四半期、アップルの各種サーヴィスは前年同時期の115億ドルから132億ドルと、2桁成長だったことが報告されている。
アップルは「App Store」、「iCloud」、「Apple Music」、「Apple TV」をはじめとする各種サーヴィスを展開している。つまり、これらのサーヴィスはアップルのすべてのデヴァイスの結合組織であると同時に、それ自体がコンテンツでもあるのだ。
さらにブルームバーグの報道によると、アップルは自社製品の愛好家向けに、「Amazon Prime」のような独自のサブスクリプションのバンドルも準備しているという。
アップルへの厳しい視線も
しかし、アップルのサーヴィスの成功に対しては、向けられる視線も厳しくなっている。7月末には、独占禁止法を巡って大手テック企業の責任者らを対象に米下院司法委員会の公聴会が開かれ、アップルの最高経営責任者(CEO)であるティム・クックもオンラインで証言している。
さらにアップルは、反トラスト法(独占禁止法)違反の恐れがあるとして欧州委員会から調査を受けている。そして現在、アップルの閉ざされた庭の中でアプリを開発、販売、流通したいと考える大小さまざまなアプリ開発者を相手に、手数料を巡って激しい戦いを繰り広げている。
アップルがこのパンデミック下でも非常にうまくやってきたことは間違いない。ほかにも好調なテック企業はあるものの、そうした企業にはソフトウェアが事業の中心のものが含まれる。こうしたなかアップルは、複雑な国際的サプライチェーンに強く依存している高額なハードウェアを販売しているにもかかわらず、好調であることが特筆すべき点だろう。
発表が延期となったiPhoneを除けば、アップルはこの極めて異例な年でも製品の出荷をうまくこなし、アプリで数十億ドルの収益を上げ、それなりに例年通りのペースでイヴェントを開催してきた。そして新型iPhoneの発表も控えている。ほとんどこれまでと変わらないではないか。わたしたちを取り巻く環境が激変している点に目をつぶれば、だが。
※『WIRED』によるアップルの関連記事はこちら。
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September 13, 2020 at 07:30AM
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