消費は「お部屋時間充実」へ向かう?
6月19日から県外への移動も自粛解除の動きがあり、これまで巣ごもりを迫られていた生活も、少しずつ元に戻りつつあるところだ。とはいえ、いったん知ってしまった巣ごもりの快適さに、できることならもっと充実させたいというインドア派の人も少なくない事だろう。
そんな折も折、ここにきて注目度の高いサウンドバーが続々と登場している。しかも、そんなに高くないのだ。そこで今週から2回に分けて、2~3万円くらいで購入できるサウンドバー2製品を紹介する。
元々サウンドバーは、テレビのグレードを上げるという文脈で使われてきた製品だ。しかし動画配信サービスが4K化とともにDolby Atmos化にも力を入れ始めており、新しい規格に対応するサウンドシステムが求められているところである。
とはいえ、立体音響方式であるDolby Atmosをリアルスピーカーで実現しようとすると、天井に2~4個のスピーカーを設置する必要がある。そんなこと、一般家庭ではまず不可能だ。それがサウンドバー1本でやれるとなれば、俄然話は変わってくる。
というわけで、まずは6月11日より発売された、Dolby Atmos対応のAnker「Soundcore Infini Pro」を取り上げる。価格は22,990円(税込)。
Ankerといえばモバイルバッテリーしかご存じない方も多いと思うが、オーディオ製品のSoundcoreシリーズは、低価格ながら高性能ということで、オーディオ専門メーカーもなかなかここまでは……という勢いで商品展開している。その中にあってサウンドバーのInfiniシリーズは、2018年のInfini Mini、2019年のInfiniと続いてきたが、今年はついにProに到達したという事になる。
2万チョイで買えるDolby Atmos対応サウンドバーの実力を、さっそく試してみよう。
音質は良好、Dolby Atmosは相性あり?
では早速音を聞いてみよう。まずはコンテンツの再生機としてAmazon Fire TV Cubeを使用してみた。Fire TV CubeはDolby Atmosに対応しており、このHDMI出力にInfini Proを接続、スルー出力に4K/HDR対応テレビをARCで接続している。
Amazonプライムでは、Dolby Atmos対応コンテンツをいくつか配信しているはずだが、コンテンツ選択画面からは音声フォーマットがわからない。ネットで検索してみたところ、「トム・クランシー/CIA分析官 ジャック・ライアン」はDolby Atmosで配信している事がわかった。
コンテンツを再生して、音声切り換えメニューを出すと、ステレオ、ドルビーデジタルプラス、Dolby Atmosと3つの選択肢が出るので、Dolby Atmosに切り換えておく。
ジャック・ライアンは一見ワイルドそうに見えるが、派手にドンパチするシーンはそれほど多くないので、なかなかDolby Atmosらしいシーンを探すのに苦労するコンテンツだ。
しかしFire TV側でDolby Atmosを選択しているにもかかわらず、本機のSURROUNDのLED表示は白のままであった。前出のように、説明書によればDolby Atmos信号を受信すると青になるはずだが、変わらない。
一応念のためにAmazon Echo StudioをFireTV Cubeに接続し、Dolby Atmosで再生してみた。こちらは特に表示などは出ないが、きちんとサウンドフィールドの中に入っている感覚が得られた。
HDMIケーブル等も変えてみたのだが、変化はなかった。機材同士の相性の問題もあろうかと思うが、筆者の知識では原因究明ができなかった。
そこでDolby Atmos出力対応の4K Ultra HD Blu-rayの再生ができるレコーダーを接続。音声トラックにDolby Atmosが含まれるUHD BDの「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を再生してみた。するとSURROUNDのLED表⽰が青に変わり、Dolby Atmos再生であることが確認できた。
改めてDolby Atmos再生を聞いてみると、5.1ch再生に比べて音空間が上下方向にも広がり、平面空間の広がり以上に立体感がある音像を確認できた。
ただ、上方向に向いているのがサブウーファだけという事もあり、音像は球形というよりも楕円球? のように感じる。元々低音域は方向性が希薄なので、上下方向へ方向性を出そうとするならば、もうちょっと高域まで出るスピーカーが上向きに欲しいところである。
サウンドモードも試してみた。Movieモードでは低域がズーンと下まで出るが、中音域まで隙間が開くような特性である。効果音の迫力重視という事だろう。Musicモードはバランスがよく、まさに音楽鑑賞にはクセがなく、一般の2.1chオーディオセットと遜色ないサウンドだ。特にサラウンドモードと組み合わせると、本体幅よりも広い音場を形成するので、なかなか楽しい。
Voiceモードは、テレビ向けスピーカーでよくあるような、肉声音域に絞った、鼻をつまんだようなイコライジングを想像するが、本機の場合はそこまで尖っていない。全体をバランス良く鳴らしながら、多少肉声音域を強調するといった作りだ。
音楽再生とテレビ再生をテスト
せっかくBluetoothもあることだし、音楽再生もテストしてみよう。リモコンや本体のBluetoothボタンを長押しすると、ペアリングモードに入る。
低音は+2ぐらい上げると、低音好きの方にも満足できるだろう。+3だとやや多めという気がする。サラウンドモードだと音楽は中抜けする感じもある。サラウンドをOFFにすると音量がかなり下がって地味な音になるが、ボリュームを上げるとこれはこれでなかなかしっかりしたいい音がする。両方のモードで色々聴き比べてみると楽しいだろう。
ただしBluetooth接続だと、コーデックがSBCでしか接続できないようだ。ACCとaptXで接続できるパソコンで繋いでみたが、SBCでしか接続できなかった。
Fire TVシリーズがあれば、音楽サービスもアプリによって再生できるので、Bluetoothに頼らなくても音楽再生はできる。ただしテレビとのARC接続では、テレビの入力を切り換えるとサウンドバーの音声入力も切り替わってしまうので、マルチに使いたいという方はあえてARC対応ではない端子に繋いだ方が使いやすいかもしれない。
サウンドバーが常時鳴るコンテンツといえば、テレビ番組である。HDMIでARC接続するか、光デジタルケーブルで接続すれば、テレビ音声をサウンドバーから出力できる。ただし、HDMIでARC接続した場合、CMの切れ目や番組に入った時に、2秒間ほど無音になるという現象が見られた。恐らくその瞬間に放送波に音声制御信号が乗ってきているのだと思うが、それに対していちいち反応しようとするようである。
一方で光デジタルケーブルでテレビと接続した場合は、このような音切れは見られなかった。先にテレビ側で制御信号を受けたのち、映像と分離した音声信号を光ケーブルで流しているだけだからだろうと想像する。
総論
オーディオの世界では、かねてから立ちあがってくる技術は数々あれど、一般普及にまで広く進んだ技術は少ない。そんな中Dolby Atmosは、5.1chサラウンド以来、久々にやってきた大波のように見える。
これが格安で体験できる本機は、Dolby Atmosのソースはあるが聴いたことがないという方への入門機として、手が出しやすい価格だ。ただ、Fire TV Cubeと相性があるらしいところが、悩ましいところである。メーカーには、そのあたりの検証をお願いしておきたい。
またテレビ再生においては、ARCではコンテンツが切り替わるたびに音が出なくなるという現象はネットでも数多く報告されており、これは相性の問題ではなさそうだ。米国ではすでに昨年から発売されているモデルだが、特にそのようなクレームはないように見える。日本と米国では放送時のオーディオ制御信号の出し方が違うため、日本固有の問題なのかもしれない。その現象でお困りの方は、上記検証のように光デジタル接続で凌ぐしかないだろう。
一般に低価格スピーカーは、音質の方が今一つということがよくあるが、本機は外付けサブウーファーなしでも十分な低音再生を確保し、音楽的な意味でのバランスもいい。デザインもスマートで安っぽさがないところも、さすがAnkerというところである。
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July 01, 2020 at 06:30AM
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