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4コアながら侮れない 第3世代Ryzen待望のエントリーモデル「Ryzen 3 3100」「Ryzen 3 3300X」を試す - ITmedia

 2020年4月、デスクトップPC向けRyzenプロセッサの新製品「Ryzen 3 3100」「Ryzen 3 3300X」が発表された。

 2019年7月以来、ハイエンド帯の「Ryzen 7」や「Ryzen 9」、ミドルレンジの「Ryzen 5」と第3世代Ryzenプロセッサのラインアップを拡充してきたAMDだが、今回追加されたエントリー向けの2製品は今までの製品よりも手頃で、税別の想定販売価格がRyzen 3 3100で1万1980円、Ryzen 3 3300Xで1万3980円となっている。カジュアルユーザーにとっては、待望の新CPUともいえる。

 日本発売を5月23日に控える両CPUだが、ITmedia PC USERでは発売前に試用する機会を得た。ベンチマークテストを通して、その実力をチェックする。

Ryzen 3 3300X Socket AM4に収まった「Ryzen 3 3300X」

Ryzen 3初のマルチスレッディング対応 CCX構成の違いにも注目

 Ryzen 3 3100/3300Xは、いずれも最新の「Zen 2」アーキテクチャで製造された4コア8スレッドCPUだ。デスクトップPC向けの第3世代Ryzenプロセッサの中では、6コア6スレッドの「Ryzen 5 3500」に次ぐモデルという位置付けで、総スレッドは多いものの、物理コアは少ない。

 ちなみに、AMDもアピールしていることだが、Ryzen 3 3100/3300XはデスクトップPC向けのRyzen 3プロセッサとしては初めて「SMT(Simultaneous Multi Threading:同時マルチスレッディング)」に対応している。

Ryzen 3 3100(正面)Ryzen 3 3100(背面) Ryzen 3 3100。「Socket AM4」に対応しており、外観は先行する第3世代Ryzenプロセッサと変わりない
Ryzen 3 3300X(正面)Ryzen 3 3300X(背面) Ryzen 3 3300X。先に挙げたRyzen 3 3100と見た目は変わりないが……

 両CPUのスペックを確認してみると、Ryzen 3 3100のベースクロック(周波数)は3.6GHz、ブーストクロックは最大3.9GHz、Ryzen 3 3300Xのベースクロックは3.8GHz、ブーストクロックは最大4.3GHzとなっている。その他、メインメモリは「DDR4-3200」規格のものに対応し、CPUキャッシュはL2とL3の合計で18MB、TDP(熱設計電力)は65W、純正クーラー「Wraith Stealth」が付属する、といった仕様は共通だ。

 一見すると、両者は動作クロックの設定だけが異なるCPUであるように見える。「なんで別製品にしているのだろうか?」と思わなくもない。

スペック表 Ryzen 3 3100とRyzen 3 3300Xのスペック表。一見するとほぼ同じように見えるが……

 しかし、これら2つのCPUは同じコアとスレッドの数でも、内部構成が異なる

 PC USERを含め、各種メディアに掲載された記事でも触れられている通り、第3世代Ryzenプロセッサは、CPUのコアとキャッシュを一体化したユニット「CCX(Core Complex)」と各種入出力を担う「I/Oダイ」と連結することで1つのCPUを構成する設計となっている。実際のCCXは「CCD(Core Complex Die)」と呼ばれるCPUダイに最大で2基搭載される。

 AMDの資料によると、Ryzen 3 3100のCCDは「2コア/8MB L3キャッシュ」のCCXを2基搭載しているのに対し、Ryzen 3 3300XのCCDは「4コア/16MB L3キャッシュ16MB」のCCXを1つだけ搭載している。同じ「4コア/16MB L3キャッシュ」のCPUでも、その実現方法に違いがあるということだ。この違いは、「CPU-Z」のようなCPU情報を表示できるアプリで確認できる。

 この構成の違いは、処理パフォーマンスの差につながる。シングルCCX構成のRyzen 3 3300Xは、デュアルCCX構成のRyzen 3 3100で生じうるコア間通信の遅延(レイテンシー)を大きく抑制できるため、単純な動作クロック差以上のパフォーマンス差をもたらす。この差は、後述するベンチマークテストの結果を見れば分かる。

構造図 AMD提供の資料。Ryzen 3 3100とRyzen 3 3300Xは「4コア8スレッド/16MB L3キャッシュ」の実現方法が異なる
CPU-Zの表示 左がRyzen 3 3100、右がRyzen 3 3300XのCPU情報。Ryzen 3 3100はL3(Level 3)キャッシュの容量が「2 x 8 MBytes」になっているが、これはCCXが2基あることを示している。一方、Ryzen 3 3300XのL3キャッシュの容量「16 MBytes」となっており、CCXが1基であることを示している

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4コア8スレッドでも侮れないパフォーマンス

 ここからは、実際にRyzen 3 3100/3300Xのパフォーマンスをベンチマークテストを通して確認していく。

 今回の「レビューキット(テスト用機材のセット)」はCPUのみで、手持ちの「AMD X570」チップセットを備えるマザーボードを使ってテストを行った。CPUクーラーは両CPUに付属するWraith Stealthをそのまま使い、GPUはAMDの「Radeon RX 5700 XT」を組み合わせている。

仕様 今回レビューに用いた機材の構成

CINEBENCH R15/R20

 まずは、CPUを使ったレンダリング性能を計測する定番ベンチマークアプリ「CINEBENCH R15」「CINEBENCH R20」の結果を見てみよう。

 第3世代Ryzenプロセッサは、IPC(クロック当たりの命令実行数)を向上させるなどの改善を通して前世代から処理性能を大きく伸ばしている。このことは当然、Ryzen 3 3100/3300Xにも当てはまる。4コア8スレッドCPUながら、マルチ、シングルの両方において良好なスコアを残している。

 CINEBENCH R15で見ると、Ryzen 3 3100はマルチスコアが981cb、シングルスコアが180cbとなった。一方、Ryzen 3 3300Xはマルチスコアが1106cb、シングルスコアが202cbとなった。

 過去のベンチマーク結果を見る限り、Ryzen 3 3300Xは前世代までのミドルレンジCPU「Ryzen 5 2600」と大差なく、競合であるIntelの6コアCPUをしのぐスコアを記録している。コア数は控えめながら、侮れないパフォーマンスを発揮することが伺える。

 Ryzen 3 3100とRyzen 3 3300Xで比べると、マルチはともかく、シングルCPUのスコアで予想以上に差が付いたことは気になる。

CINEBENCH R15 CINEBENCH R15の結果。Ryzen 3 3100とRyzen 3 3300XでシングルCPU時のスコアに差が出ていることは気になる

 コア数がより多いCPU向けに最適化されたCINEBENCH R20でも、スコア自体の傾向は大きく変わらない。特にRyzen 3 3300Xのシングルスレッド性能の高さは注目に値する。DirectX 11以前のAPIを活用したPCゲームなど、シングルスレッド性能の高さが処理パフォーマンスの差に直結する場面では、低価格ながら有力な選択肢となるだろう。

 ちなみに高負荷時の全コアクロックは、Ryzen 3 3100で3.8GHz前後、Ryzen 3 3300Xで4.1GHz前後だった。CINEBENCH R20を複数回連続実行した場合のTdie温度(ダイの実温度)は、Ryzen 3 3100で73度前後、Ryzen 3 3300Xで78度前後だった。付属のWraith Stealthでも問題なく冷やしきれそうだが、冷却性能に余裕を持たせたいなら、CPUクーラーを別途用意してもいいだろう。

CINEBENCH R20 CINEBENCH R20の結果。計測値の傾向はR15と同様だ

V-Ray NEXT Benchmark

 続いて、同じくレンダリング系のベンチマークソフトである「V-Ray NEXT Benchmark」の結果を見てみよう。

 こちらも独自のスコアで結果が算出されるテストで、Ryzen 3 3100は6329ksamples、Ryzen 3 3300Xは7420ksamplesという数値が出た。15%ほどの少なくない差が出ている。

 先ほどのCIENBENCHのマルチCPUテストにおけるスコアでは、Ryzen 3 3100とRyzen 3 3300Xとのスコアの開きは11〜12%ほど。「誤差」と言うには、パフォーマンスの隔たりはやや大きい。

 Ryzen 3 3100とRyzen 3 3300Xのどちらを買うか検討する際は、性能と価格のバランスをしっかり吟味することをおすすめしたい。

V-Ray NEXT Benchmark V-Ray NEXT Benchmarkの計測結果

PCMark 10(Extended)

 引き続き、PCの総合的な性能を計測するベンチマークソフト「PCMark 10」を使って総合的なパフォーマンスを確認してみる。今回は全てのテストグループを実行する「Extended」を利用している。

 今回のベンチマークテストでは、CPU以外のパーツ構成は同一としているが、Ryzen 3 3100とRyzen 3 3300Xで総合スコアにおいて9%の差が出た。どちらの結果も4コアCPUとしては悪くはないが、同じ“4コア8スレッドCPU”と考えると、やはりRyzen 3 3300Xの優秀さが目立つ。

 どのテストグループでも、総じてRyzen 3 3300Xのスコアは明確に高い。ビジネスアプリの起動や立ち上げに関するテストはもちろん、同じGPUを使用しているはずの「Gaming」テストでも、それなりに目立つスコア差が生じている。この傾向は、後述するゲーム系ベンチマークでも同様だ。

 単に動作クロックのみを調整したCPUを比較した場合、ベンチマークのスコアに大差がないことはままあることだ。しかし、Ryzen 3 3100とRyzen 3 3300Xとの比較では、CCXの構成の違いがパフォーマンスに差をもたらしていると考えてよいだろう。

PCMark 10 PCMark 10の結果(Digitalは「Digital Content Creation」を指す)

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3DMark

 3D描画性能を計測する「3DMark」では、DirectX 12 APIを採用した「Time Spy」系テスト、DirectX 11 APIを使用した「Fire Strike」系テストをそれぞれ実行した。

 まずはTime Spy系テストの結果から見てみよう。Time Spy系のテストは高負荷なことでも知られるが、GPU側の負荷が重い3D描画系テストでは、相対的にCPUの影響が小さくなる傾向がある。そのこともあり、Ryzen 3 3100とRyzen 3 3300Xの差は少なかった。

 実際の使用ケースではあまりないかもしれないが、ハイエンドGPUと組み合わせて最新のビッグタイトルをプレイするような状況なら、2つのCPUの差はそれほど問題にならない

3DMark(Time Spy) 3DMark(Time Spy系テスト)の結果

 一方のFire Strike系テストでは、フルHD(1920×1080ピクセル)で実行される「Fire Strike」と、それ以上の描画解像度で実行される「Fire Strike Extreme」「Fire Strike Ultra」でスコアの傾向が異なる。

 Fire Strikeでは、CPUによって総合スコアに5%ほどの差が出た。しかし、Fire Strike Extreme/Ultraの総合スコアの差はほとんど誤差レベルとなった。低負荷な状況では、Ryzen 3 3300Xがフレームレートにおいて有利に立ちやすいことは間違いない。

3DMark(Fire Strike) 3DMark(Fire Strike系テスト)の結果

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク

 負荷が軽い3Dゲームについて、もう少し検証する。実ゲームを元にしたベンチマークソフト「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」で、画質「最高品質」、フルスクリーンの設定を適用し、フルHD、WQHD(2560×1440ピクセル)、4K(3840×2160ピクセル)の3パターンでスコアを計測してみよう。

 フルHDの計測では、CPUの違いで12%前後の差が付いた。これは先ほどの3DMarkよりも大きな差だ。このタイトルではWQHD描画でもそれほど負荷がかからないため、CPU間でのスコア差が8%程度と大きめとなった。

 一方、負荷の大きい4K描画のスコアに限っては、Ryzen 3 3300Xの方がスコアが良いものの、Ryzen 3 3100と有意な差があるかというとそうでもない。

 価格を抑えたRyzen 3は、フルHDでのゲームプレイをターゲットにしたPCに採用される機会も多い。GPUの選択にもよるが、グラフィックスの負荷が軽いゲームならRyzen 3 3300Xの方が動作の面で優位性があることは覚えておきたい。

FF14ベンチ ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークの結果

消費電力チェック

 最後に、ワットチェッカーを使ってシステム全体の消費電力をチェックする。

 起動後10分間何もせずに安定させた場合の電力値を「アイドル時」とした上で、「CINEBENCH R20実行時」「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク実行時」の消費電力の最高値を計測した。

 アイドル時の電力はRyzen 3 3100の方がやや高く出ているが、第3世代Ryzenプロセッサを搭載したPCとしては可もなく不可もない値だ。そして、高負荷時の電力はわずかにRyzen 3 3300X搭載時の方が高いものの、いずれも同程度に留まる。

電力 消費電力の比較

1万円台CPUの新たな選択肢 Ryzen 3 3300Xの性能は魅力

 冒頭でも述べた通り、Ryzen 3 3100とRyzen 3 3300Xの税別想定販売価格は1万円台前半となる。コストパフォーマンスの高さに定評のあるRyzenプロセッサだが、5月16日の国内発売が決定した「Ryzen 5 1600 AF」(税別想定販売価格9980円)も含めると低価格CPUの選択肢がさらに増えることになる。4コア8スレッドCPUがメインストリームの最上位に君臨していた数年前のことを思えば、なんともぜいたくな状況ともいえる。

 Ryzen 3 3100の評価は、実売価格次第な面があるものの、Ryzen 3 3300Xに関しては、4コア8スレッドのCPUとしてトップクラスのパフォーマンスを発揮できることに注目したい。

 シングルスレッド性能の高さがメリットになりやすいPCゲームなどでは明確な強みがあるため、特に人気を集めそうだ。

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